ナノ構造制御により次世代マグネシウム電池の電極材料を開発 立命館大など
2020年2月1日 11:06
立命館大学、東京農工大学の共同研究グループは1月29日、新たなマグネシウム電池の電極材料を開発したと発表した。
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現在、IT機器や電気自動車などに使われているリチウムイオン電池は、リチウムやコバルトなどの資源的な制約が課題となっている。そこで、高価な元素を材料に使用しないマグネシウム電池などは、次世代の2次電池として広く研究開発が続けられている。
繰り返し充放電が可能なマグネシウム2次電池は、安価な材料を用いて作製できることから次世代電池として有望視されてきた。しかし、マグネシウムイオンは価数が2価と大きく、スムーズな充放電を行うのはリチウムイオン電池よりも難しいという課題があった。
マグネシウム電池は、マグネシウムイオンが電極の結晶構造の中を動くことで充放電する仕組みになっている。しかし、マグネシウムイオンの価数が大きいと結晶構造の中で電荷の反発が起こり、スムーズにマグネシウムイオンが移動できないのである。
そこで研究グループは、電極材料の結晶構造にゆがみを導入させたユニークな構造を設計した。ゆがみが存在することによって、マグネシウムイオンがスムーズに結晶構造の中を行き来できるようになったのである。
さらに、電極材料をカーボンとナノレベルで複合することにより、さらに充放電が容易になった。Spring-8と呼ばれている高エネルギーX線装置によって電極材料の解析を行ったところ、結晶体とアモルファス体の中間状態であることも判明している。
今回の研究により、ナノ空間を用いた材料設計を行うことで、通常では難しい充放電の反応を起こすことが可能であることが示された。
これまではマグネシウム2次電池は、100度程度の高温にしてマグネシウムイオンを動きやすくしないと動作しなかった。しかし研究グループが開発した材料は、室温という低い温度でも電池として機能しうる点が画期的である。
この材料設計の指針を用いることで、マグネシウム2次電池を実用化し低コストな電池の製造が現実的となる可能性がある。
本研究の成果は、1月27日付のChemistry of Materials誌のオンライン版に掲載されている。