やる気の回復を促す糖、脳内で発見される 名大など
2020年1月26日 16:21
10から20%が一生に一度はかかるため、「心の風邪」とも呼ばれるうつ病。思考や意欲(やる気)が落ち、身体にも影響を及ぼすなど、現代のストレス社会において深刻さは年々増している。名古屋大学は22日、やる気の回復を促す脳内分子を発見したと発表した。
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■効果薄な従来の抗うつ薬
うつ病はまだ十分に解明されていない点が多い。気分の調節を担うセロトニンや、ストレスを感じたときに放出されるノルアドレナリン等の神経伝達物質が関係していると従来いわれている。
そのため、これらの神経伝達物質が脳内で再取り込みされることを阻害する抗うつ薬が広く用いられている。しかし満足いく効果を発揮しないため、困っている患者は少なくないという。
母乳や卵に多く含まれる糖から構成されるポリシアル酸は、胎児の脳に一時的に発現し、神経系が正常に発達するために重要な役割を果たすことが判明している。また大人の脳内でもポリシアル酸が神経伝達物質等と結合され、神経活動のコントロールに関わる可能性が指摘されているが、詳細については不明な点が多かった。
■糖の一種がやる気を引き起こす
名古屋大学、北海道大学、九州大学の研究者から構成されるグループが注目したのが、「海馬」と呼ばれる、認知と気分をコントロールする脳の部位だ。マウスの海馬内の神経回路に含まれる抑制性ニューロンの一部に、ポリシアル酸が発現されているという。
研究グループがその機能を研究した結果、ポリシアル酸が発現する同ニューロンでは、不安や食欲をコントロールするアミノ酸の一種「ペプチド」が確認された。
うつ病のマウスにSSRIを投与したところ、やる気に関わる神経伝達物質の伝達を示すタンパク質が多く発現することが確認された。このことから、ポリシアル酸が気分の改善ややる気の回復を促す脳内分子である可能性が示唆された。
今後は、本研究成果をもとにうつ病の治療法が新たに発展するだろうと、研究グループは期待を寄せている。
研究の詳細は、米神経科学学会誌The Journal of Neuroscienceにて22日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)