杉の年輪から紀元前660年頃の巨大太陽フレアを解明 山形大など
2020年1月24日 08:17
オーロラの原因である太陽フレアの規模が大きくなると、通信障害など地球に甚大な被害を及ぼす。山形大学は20日、複数の太陽フレアが、紀元前660年頃の宇宙線の増大をもたらした可能性が高いことを突き止めたと発表した。
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■太陽フレアが引き起こす宇宙線増大
超新星爆発やブラックホール、太陽などの天体から降り注ぐ高エネルギーの粒子が宇宙線だ。宇宙線が増大すると、酸素や窒素などの大気元素と衝突することで、炭素14やベリリウム10等の放射性同位体(宇宙線生成核種)が生成される。
宇宙線は、「銀河宇宙線」と呼ばれる太陽系外の超新星爆発によって発生したものが一般的だ。他方、巨大な太陽フレア(太陽面爆発)に起源をもつ高エネルギー粒子も含まれる。
巨大な太陽フレアは高エネルギー粒子を地球にもたらし、通信障害など甚大な被害が及ぼされる。そのため、宇宙線の増大など挙動を知ることで、地球への被害の対策となりうる。
■杉の年輪から明かされる宇宙線増大の原因
宇宙線生成核種は、樹木の年輪や南極等の地域の氷床コアに取り込まれる。そのため、炭素14やベリリウム10といった放射性同位体を測定することで、過去に飛来した宇宙線の量が推定できる。
この測定法により、774年と993年頃に超巨大規模の太陽フレアによる宇宙線量の急増が確認されている。他方、紀元前660年頃にも炭素14の増加が確認されているものの、先の2つのイベントと挙動が異なり、詳細も不明だった。
山形大学、名古屋大学、弘前大学の研究者らから構成されるグループが、山形県と秋田県の県境の鳥海山に埋没した神代杉の年輪を分析した結果、継続期間が長く、複数回の超巨大太陽面フレアが原因である可能性が判明した。
過去3回の超巨大太陽フレアは、人工衛星の故障などが起こりうる規模だという。今後は、南極氷床コアに含まれるベリリウム10を分析するなどして、紀元前660年頃の宇宙線増大の詳細がさらに解明されるだろうとしている。
研究の詳細は、国際学術誌Scientific Reportsにて20日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)