リチウムイオン電池の弱点を克服する二次電池の開発 東京理科大
2020年1月17日 16:59
EVを中心に需要が伸びる一方、発火など安全性の懸念もあるリチウムイオン二次電池。全固体電池やリチウム硫黄電池等の次世代二次電池の開発が急務になるなか、リチウムイオン電池の弱点を克服したカリウムイオン電池の研究をまとめた総説論文が、第一人者である東京理科大学の駒場慎一教授によって提出された。
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■リチウムイオン電池の弱点
リチウムイオン電池は、充電・放電可能な二次電池として利用されている。吉野彰氏が2019年にノーベル化学賞を受賞したことでも知られ、従来のニッケル・カドミウム電池やニッケル・水素電池よりも長寿命、軽量かつエネルギー密度が高いという利点をもつ。そのためスマートフォンやノートパソコン、再生可能エネルギーを有効活用する定置型蓄電池としても活用されている。
一方で、リチウムイオン電池は2つの問題を抱える。1つは資源の問題だ。材料となるリチウム資源は南北アメリカ大陸やオーストラリア、中国などに集中するため、日本は材料調達を輸入に頼る。だが世界全体でリチウムの需要が急増しているため、価格も高騰している。また材料の1つであるレアメタル(希少金属)のコバルトも、日本で自給できない。
もう1つは安全性の問題だ。リチウムイオン電池を構成する電解液は熱によって揮発・印加しやすく、衝撃や経年劣化等によって壊れる可能性がある。
■リチウムに代わる材料
駒場教授が2009年に開発したのが、リチウムの代わりにナトリウムを用いるナトリウムイオン電池だ。毒性元素や希少元素に頼ることなく、ナトリウムや鉄、マンガンなど、資源量豊富かつ毒性元素や希少元素に頼らない二次電池の開発にも成功した。
さらに改良を重ねられたのが、カリウムイオン電池だ。地殻の2.6%を占める資源量豊富なカリウムだが、原子量が小さいほど電気容量が大きく、電池素材としては不向きだと考えられてきた。
だが今回、リチウムイオン電池と同じ電圧を示す新型二次電池の開発に成功したという。カリウムイオン電池は発火リスクも小さく、安価で資源量豊富な原料を用いるなど、次世代電池として期待される。
研究グループによるカリウムイオン電池の総説論文は、米化学誌Chemical Reviewsにて15日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)