ソニーがイメージするクルマの理想形! プロトタイプ発表で、業界騒然! (下)

2020年1月15日 07:48

 視覚的な面での斬新性は、フロント側のダッシュボードに配置されたパノラミックスクリーンだ。テスラの運転席に配置されたモニターにも従来のクルマにはないアイデアが感じられたが、VISION-Sのインパネ部分はすべてがディスプレイである。

【前回は】ソニーがイメージするクルマの理想形! プロトタイプ発表で、業界騒然! (上)

 走行状況を確認することはもちろん、これから本格化する通信環境の5G化に対応した情報やエンタメコンテンツがディスプレイ上に表示され、画面タッチによる直感的操作で種々のオペレーションが可能となる。

 従来のクルマにあったドアミラーは、カメラ技術の活用による高解像度の電子ミラーに進化して、撮影された左右後方の映像はディスプレイの両端に高い視認性で表示される。

 音響分野でも高い存在感を示してきたソニーは、独自の「360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ)」と呼ぶ音響システムで、スピーカーを内蔵したシートを存分に活用した立体音場を形成し、車内での新しいオーディオ体験が可能となった。

 クルマのEV化が活性化した時期に語られたのは「電気自動車になれば内燃機エンジン車のような膨大な部品が不要となるので、異業種からの新規参入が容易になる」ということだった。

 実際にはテスラも過酷な生みの苦しみを味わったし、内燃機エンジン技術の蓄積のない中国が一気にEV化でクルマの覇権を取ろうとしたものの、小休止を余儀なくされていることからも容易でないことは広く認識されていた。

 ソニーが完成度の高いプロトタイプを発表したとはいっても、「ソニーのクルマ」を販売する訳ではないと”公式”にコメントされている。

 「ソニーが展望する試作車」とも読めるVISION-S PROTOTYPEは、ソニー製品をクルマに採用するとどれ程の高い安全性と快適性が実現できるかということを宣言する、第一級のセールスマンだから、高度な技術と部品を自動車メーカーやサプライヤーに売り込むためのツールと見た方が良いだろう。

 もちろん、今後の進展如何によっては”気が変わる”こともあるかも知れない。クルマをファブレスメーカーとして生産し、大手ディラー等との提携によって一気にサービス網が獲得できれば、現存の自動車メーカーが営々と築いてきた地歩に近づくことすら可能かと思わせる。

 世界中で自動運転の覇者を目指す自動車メーカーやサプライヤーの、連合や協業の動きが一段と熱を帯びて来た。まるで自動運転への乗り換えに躓くと、企業自体の命運にかかわるかの感すらある。

 その自動運転に欠かせないと目されているのが、ソニーお得意のイメージセンサーに代表されるイメージ・センシングの技術だ。国内のトヨタ、日産はもちろん、海外のベンツ、アウディなどの自動車メーカーや、サプライヤーの部品に組込まれる機会を含めると、想定されるビジネスチャンスは大きく広がる。プロトタイプまで作成して強力なアピールを始めているのは、今が存在感を主張する絶好機と捉えているからだろう。


 日本のアイデンティティーとも言えるソニーのクルマに乗りたいと思う人たちは、決して少なくはないだろうから、今年の初夢のようなビッグニュースだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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