加速する韓国の「指殺人」 その背景にある韓国人らしさとは

2020年1月8日 11:43

 韓国の「指殺人」というのを知っているだろうか。指殺人とは、SNSにアンチコメントを書き込み自殺に追い込むことだ。

 2019年に指殺人の被害にあったことで知られるのは、元F(X)のソルリと元KARAのハラである。元WANNA ONEのカンダニエルもアンチコメントに苦しみ、活動を休止している。

 なぜ韓国は、こうもアンチコメントが多いのだろうか。その理由は、韓国がITの発達により急成長を遂げた国だからだと考えられる。

 ネットの浸透率は日本よりも高く、国連電気通信連合(ITU)によると韓国は毎年、1位か2位に位置づける上位のネット国だ。大統領選もネットで行い、アイドルも戦略的にネットを使っている。

 私の韓国人の知り合いたちも、性別、年齢を問わずSNSを楽しんでいる。しかし、急激なネットの普及がもたらしたのは良いことばかりではなかった。

 格差社会が固定化し、道徳的な教育と法整備が追い付かなかったのである。

 まず、格差社会の固定化は韓国人に多大なストレスを与えた。学生のころから、朝から晩まで勉強に明け暮れる日々。日本のように部活を楽しむ余裕はなく、毎日必死に勉強をする。

 サムスンなどの大手IT企業に入らなければ豊かな生活は送れない。しかし当然みんなが成功できるわけではない。上手くいかない人のストレスは多大なものだろう。

 そのストレスが、アイドルへのアンチコメントという形で現れたのだ。

 韓国では、「アイドル」は若者がなりたいNo,1の人気職業だ。きらびやかに歌って踊り、周りにちやほやされる。人気アイドルになれば、大手IT企業に就職するよりも稼げるだろう。

 そのキラキラした成功が、一般韓国人にとっては嫉妬の対象となったのである。

 アイドルが、これまで売り出してきたキャラクターと、イメージが違うようなことがあれば、大きく叩かれたのだ。例えば、整形、熱愛、親日などだ。

 そして厄介なことに、これが嘘のニュースであったとしても関係がなかった。ダイエットに成功し、顔つきが変わったアイドルが、整形だと叩かれる。

 そのうえ、「一度、韓国で叩かれ始めると、二度と韓国では復帰できない」と言われているほど、アンチコメントはしつこかった。

 元KARAのハラが日本で再出発を決めたのはこういった背景からである。ソルリやハラの衝撃的な死に、事態の深刻さを理解した韓国は、この状況に対策を講じ始めた。

 Daum(ダウム)というニュースサイトは、芸能ニュースのコメントを廃止。韓国の大手ニュースサイトのNAVERは、AIを使ってアンチコメントを自動的に削除する試みだ。

 さらにSNSに寄せられるアンチコメントを防ぐため、「情報通信網利用促進および情報保護などに関する法律」、通称「ソルリ法」と呼ばれる法律が発議された。

 これは「コメントをするときに、IDとIPアドレスを公開する」「当事者以外の第3者もアンチコメントの削除要請を可能にする」という内容だ。

 韓国はソルリやハラの死から学び、成長しようとしている。もう二度と、「指殺人」が起こらないように願いたい。(記事:坂東泰地・記事一覧を見る

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