アルファレオHD、乾汽船の取締役解任求める訴状全文を公開
2019年12月31日 18:10
12月初めに乾汽船に対して、乾康之社長の取締役解任を求める訴えを東京地裁に出したアルファレオホールディングスは30日、Webサイト上に訴状を全面公開した。異例の行動で同社の訴訟にかける強い決意を改めて示したものとみられ、上場会社と筆頭株主である投資会社との争いは2020年にかけ、株式市場も巻き込んで続くこととなった。
明らかになった訴状の内容は、(1)有価証券報告書の虚偽記載(2)定款に対する違反(3)会社法に基づく招集義務違反などを主張し、乾社長の取締役解任を求めるもの。アルファレオHDは9月6日、乾汽船の定款に定められている「株式の大規模買付行為等への対応策」の廃止などを目的とする臨時株主総会の招集を請求した。
しかし、乾汽船側が「適法性に疑義がある」として11月の臨時株主総会で議案に取り上げなかったため、アルファレオHDは「19年3月期の有価証券報告書には『株主総会の決議で廃止できる』と明記されている」として虚偽記載を主張、裁判を起こした。
アルファレオHDは2014年9月、子会社を通じて乾汽船株への投資を開始。持ち株比率は徐々に増えて、19年11月に関東財務局へ提出した報告書によると、28.15%になっている。
市場ではアルファレオHDについて、さまざまな憶測が飛び交っている。しかし、同報告書では取引金融機関として三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の名が記載されているものの、詳しい実像は明らかになっていない。
一方の乾汽船は1904年に乾新兵衛氏が創業。2代新治氏、3代豊彦氏、4代英文氏、5代新悟氏と創業家出身のトップが続き、2014年10月にイヌイ倉庫と統合された際、現在の康之氏が社長に就任した。アルファレオHDは康之氏の取締役解任と後任に新悟氏の就任を示唆しており、14年のトップ交代を機に経営方針を巡る対立が深まっていったものとみられている。
19年の同社の株価は2月の673円を底に上昇を続け、9月には1259円の高値をつけた。12月30日の終値は1188円だった。市場では、訴訟と同時に水面下での乾汽船株の争奪戦も続くのではないかと、その行方が注目されている。(記事:澄・記事一覧を見る)