ビッグデータで触媒化学の開発を飛躍的に加速 北陸先端大などの研究

2019年12月28日 10:48

 近年では自然科学の分野においても人工知能の方法論は駆使され、研究開発を加速しようとする試みに用いられている。特に材料分野における人工知能の利用をマテリアルズ・インフォマティクス(MI)と呼ぶ。このMIを触媒開発に応用して成果を出したのが、北陸先端科学技術大学院大学、熊本大学、北海道大学の共同研究グループである。

【こちらも】ビッグデータとAI活用し駅の混雑を予測 ヤフーと西武が実証実験

 共同研究グループがMIを活用したのは、触媒によるメタンの酸化カップリング反応である。そのままでは有用性の低いメタンだが、触媒を用いてエタンやエチレンに変換することで価値を生むことができる。

 人工知能による機械学習で鍵となるのは、大量の実験データの蓄積である。そこで共同研究グループは、1日に4,000点もの触媒データを取得可能な「ハイスループット触媒評価装置」を設計し、利用した。それによってわずか3日で1万2,000点ものデータを取得することに成功。これは過去30年で蓄積されたデータ量を1桁上回る値である。

 続いて、この得られたビッグデータを機械学習などによって分析を行うことで、酸化カップリング反応の反応収率が大きく改善した。

 材料科学の分野において本当の意味でMIが大きく貢献するためには、良質なデータの準備が必要不可欠であったため、機械学習の仕組みそのものだけでなく、良質な学習データの取得が大きなハードルとなっていた。

 しかしこれまで公表されている論文などのデータは、各科学者の興味などによる偏向性が高く良質なデータとは言えなかった。また実験方法による違いも無視できず、機械学習には不向きであったため、今回のようなハイスループット実験によって同一の方法で大量のデータを取得する方法は、効果的と言える。

 同様の方法論は、触媒化学以外の材料科学分野においても応用されることが期待される。研究開発が飛躍的に加速していけば、これまで想像もしなかった材料が生み出される可能性が十分にあり、持続可能な社会の実現に大きく貢献する材料が次々と世に出る時代の到来となり得る。

 研究成果は、12月25日付のACS Catalysis誌のオンライン版に掲載されている。

関連記事

最新記事