セブンイレブンで続発する”失態” コンビニ業界の盟主に何が起きているのか?
2019年12月20日 21:33
セブン-イレブン・ジャパン(セブン)は加盟店のアルバイトやパートに対する労務費の、一部未払いがあったことを発表した。12月10日に永松文彦社長が発表したのは、時間給の対象になるアルバイトやパート従業員の「精勤手当」や「職責手当」に基づく残業手当が、本来支給すべき金額よりも過少だったことだ。
【こちらも】セブンイレブン、1000店の閉鎖・移転や人員適正化を発表
セブンでは記録が確認できる2012年3月以降、約3万人に対して合計約4億9千万円の未払いがあると発表した。単純計算による1人当たりの平均未払額は約1万6千円だが、最高では約280万円にもなるケースがあり、金額の振幅は相当大きいと考えるべきだろう。
所得税法によって「従業員に関する申告書・台帳」は7年間保存しなければならないので、12年3月まではさかのぼることが可能だ。それ以前の書類は廃棄している可能性が高いため、未払い対象者や未払金額を適切に算出することが不可能だということだ。
どんな立派な組織であっても人間が構成する以上、「間違い」「勘違い」「失念」を完全に無くすことは難しいが、不幸にして不都合な事例が発覚した際には、二度と「同じ過ちを繰り返さない」ことが、社会の構成員に求められる最低限の役割だ。
ところが、今回セブンが公表した労務費の一部未払いに関しては、既に2001年6月にも今回と同様の指摘を労働基準監督署から受けていたという。18年前に受けた指摘に対して、当時のセブン社内でどんな対応をしたのか、何故改善がされなかったのかは「分からない」としているが、報道に接した印象を率直に表現すると”握り潰されたまま今日まで放置されてきた”ようなものだ。自他ともにコンビニ業界の盟主を任じてきたとは思えない、余りにもお粗末な事態の発覚と言えるだろう。
未払いがいつ始まったのかは明白でないが、途中で未払いを始めることは有り得ないため、セブンが創業した70年代から現在まで続いていたと考えることが自然だろう。創業以来40年以上に渡って(途中で一度指摘を受けたにもかかわらず)、支払いがなされていなかったことになる。
セブンにまつわるネガティブ情報は今年だけで、24時間営業の時短問題、「オーナーヘルプ制度」が適切に運用されていないとする公正取引委員会への申告問題、本部社員による無断発注問題、7PAYの不正利用とサービス廃止問題、特定の条件下で表示金額と支払金額にズレが出た問題等が表面化してきた。掉尾を飾ることになった本件を数えると、片手の指では持て余す多彩さだ。
フランチャイズチェーンを展開するセブンは、店舗経営の経験がなくてもオーナーとして加盟店の運営を任せている。もちろん、ロイヤリティという経営指導料を徴収して、万全の体制で加盟店を支援していることが売りであり、逆に言うとオーナーに対して店舗経営のノウハウを伝え、商品開発を進め円滑な配送体制を整備する責任を負っている。僅か1年の間にこれだけ失態が続くと、ロイヤリティの正当性に疑問符が付けられても止むを得ない状況だろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)