東大、1億年前の海底溶岩から微細胞生物を発見 火星に生命生存可能性も

2019年12月8日 20:09

 東京大学は5日、南太平洋還流域の海底から掘削した玄武岩から微生物細胞を発見したと発表した。火星の地殻にも玄武岩が埋まっていると考えられるため、生命が生存する可能性を類推するうえで重要な成果だという。

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■生命の生息が不明だった玄武岩

 地球の地殻のうち、約70%が海洋に存在する。海洋地殻の上部には、鉄やマグネシウムを多く含む「玄武岩」と呼ばれる火成岩が含まれている。玄武岩は海底から噴出したマグマが冷え固まって形成された。

 玄武岩の存在する海底地殻上部は1000万年より以前に形成されたと考えられる。冷却以前は海水を内部に取り込むことで、生命の生存に欠かせないエネルギーが供給されていた。

 だが冷却後には水の循環が弱まるため、生命にとって必要なエネルギーが極端に減少する。また海洋地殻上部の玄武岩は堆積物の下に眠っているため、試料採取が困難という問題があった。そのため、玄武岩内部で生命が生存可能かは不明だった。

■火星の生命存在可能性を示唆する発見か

 日米の主導により、2003年から2013年にかけて、深海底を掘削することで地球の内部構造を調査するプロジェクトが実施された。

 米科学掘削船「ジョイデス・レゾリューション号」により水深約5,700メートルの海底から下を掘削し、玄武岩を調査。東京大学の研究グループが開発した、岩石のサンプルから微生物を可視化する方法が調査に用いられたという。調査の結果、「層状ケイ酸塩鉱物」と呼ばれる粘土鉱物内で、微生物が密集して生息していることが確認された。

 今回の発見は、火星における地球外生命の存在可能性を類推するうえで重要だという。火星の地殻上部には、37億年前に発生した火山活動が原因の玄武岩が含まれている。また、30億年前に火星の地表から水が消失したものの、地下にはなお液体水が存在する。

 そのため、火星には地球外生命が存在する可能性が残る。研究グループは、地球の海洋地殻上部の分析が進展することで、手がかりを得ることが期待されるとしている。

 研究の詳細は、国際学術誌Frontiers in Microbiologyにて5日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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