三菱UFJとリクルート、キャッシュレス決済で新会社 業界の現状に黒田日銀総裁も言及
2019年12月6日 19:26
三菱UFJ銀行とリクルートグループが、スマートフォンで決済できるデジタル通貨「coin(コイン)」を発行する会社を共同で設立することが4日、明らかになった。乱戦模様のキャッシュレス決済業界。奇しくも同日、東京都内で講演した黒田東彦日本銀行総裁は、乱立気味のキャッシュレス決済について「事業者間の相互運用性が確保されることで、キャッシュレス決済の全体のパイを拡大させ、win-winの関係を築き得る」と語った。
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三菱UFJ銀行はメディアの報道に対し、「両社において新会社設立の合弁契約書を締結したことは事実」との簡単なコメントの発表にとどめている。同行は2017年10月、千葉・幕張メッセで開催されたCEATEC JAPANで、行員向けに試験導入していた「MUFGコイン」をデモ公開。翌18年のCEATECでも「coin」の名称で披露している。
今回明らかになった新会社には三菱UFJが49%、リクルートが51%を出資。飲食店紹介サービス「ホットペーパーグルメ」や宿泊予約サイト「じゃらんnet」を運営するリクルートの顧客層を取り込み、ポイントも連動させる考え。
スマートフォンで使えるキャッシュレス決済は、10月から実施された消費税増税関連のポイント還元もあって、競争は過熱気味。「Pay Pay」「LINE PAY」「楽天Pay」のトップグループをはじめ、「Jコイン」(みずほ銀行)、「ゆうちょペイ」、「d払い」(NTTドコモ)、「au Pay」、「メルペイ」(メルカリ)、「FamiPay」、「Origami Pay」などが顧客の囲い込み競争を繰り広げている。
新規参入の一方、今年7月に開始したセブン&アイ・ホールディングスの「7pay」が、不正アクセス問題が原因で3カ月後の9月にサービスを終了するという波乱もあった。
●黒田日銀総裁が講演でキャッシュレス決済に言及
講演はFISC(金融情報システムセンター)の創立35周年を記念するもので、テーマは「決済のイノべーションと中央銀行の役割~ステーブルコインが投げかけた問題~」。
その中で、黒田総裁は「キャッシュレス決済サービスは、金融機関に加えて情報技術に強みのあるノンバンク、フィンテック企業が進出。10月には政府によるポイント還元も始まった」と前置きし、「キャッシュレス決済の最大のライバルは現金決済を支える銀行の店舗網とCD/ATM網。銀行間で提携しており、すなわち相互運用性がある」「キャッシュレス決済も相互運用性が確保される場合、ディスカウント合戦による顧客の囲い込み戦略から解放され、新たな付加価値をどれだけ生み出せるか競い合えることができる」などと新たな動きが出ることへの期待を述べた。(記事:澄・記事一覧を見る)