【どう見るこの相場】歳末・ボーナス商戦が佳境!バーチャルを支えるリアルとは?

2019年12月2日 11:49

■兜町の有力な景気先行指標

 今ではなかなか信じてもらえないかもしれないが、兜町ではかつて「背広」が、有力な景気先行指標とされていたことがあった。例えば、神奈川県川崎市のデパートや専門店で背広の売れ行きが伸びているなどと、支店から本店に報告が上がれば、景気底打ちのシグナルとされた。同市は、京浜工業地帯のド真ん中に位置して鉄鋼会社や石油化学会社、自動車会社、電機会社、通信機会社が集積している。このコンビナートの各社が増産に動いて残業時間が増えたから、給与がアップした工場従業員が背広を新調しておめかしをしたくなると読み解くのである。

 また兜町の隣の日本橋のデパートで、背広をいっぺんに10着も一括注文する証券マンが現れたなどの噂が流れれば、これはもちろん天井が近いとの警鐘と受け取った。「勝った、勝った」と浮かれて前後の見境もなく洋服ダンスに収まり切れないほど背広を大量注文するのは、天井形成期特有のユーフォリア(熱狂的陶酔感)状態と見極めるのである。破顔大笑が止まらない証券マンを横目に見ながら秘かにカラ売りを仕掛ける証券マンさえ出るなど、仁義なき空中戦が繰り広げられるケースもあった。

 さて師走12月、歳末商戦、ボーナス商戦が佳境に入る。また今昔物語で恐縮だが、この時期は、お歳暮を買い求める客で混雑するデパート株や正月興行期待の映画株などをシーズンストックとして囃し立て、「モチ代稼ぎ」、「ミルク代稼ぎ」の越年資金を確保するのが兜町の恒例イベントとなっていた。ところが、現在はこの消費実態がなかなかつかめない。消費関連の経済指標は、内閣府が公表している景気ウオッチャー調査などいろいろあって、消費実態は微に入り細にわたり分析されているが、投資家にとってかつての「背広」ほど直截で分かりやすく説得力があるかといえばはかなかしっくりこない。

■リアルよりバーチャル消費のウエートが増す

 この要因の一つには、リアルよりバーチャルの消費のウエートが増していることが以前から指摘されてきた。「モノ消費」から「コト消費」へシフトし、さらに中国の「独身の日」や米国の今週初の「サイバーマンデー」など、インターネット通販がリアル店舗の売り上げを凌駕して大きく成長しているからだ。まさに「アマゾン効果」や「デス・バイ・アマゾン」そのもので、リアル店舗が商品の値下げや存在自体の淘汰さえ迫られ兼ねず、さらに進出企業が急増して競争が激化して優越的地位を乱用するバーチャル企業まで出て、規制当局の調査の手も入り始めている。

 バーチャル企業ならでの苦しさもあるのだろうが、しかしバーチャルを支えるリアルがあるとすれば、話は別である。経済指標の「背広」と同様に分かりやすく説得力がある。「駕籠に乗る人、担ぐ人、そのまた草鞋を作る人」の教え通りに、バーチャルを支える宅配会社、物流センター会社、物流資機材会社、物流サービス会社など物流業務を包括的に受託する3PL(サード・パーティ・ロジスティック)関連株がこれに該当する。師走の街々を輻輳するトラックが目立つようなら、これも分かりやすく説得力のリアルな景気指標にもなるはずだ。折からこの3PL関連株には業績を上方修正する会社が続出し、小型軽量株も多く騰げ足も軽いと想定されることから、師走相場の「モチ代稼ぎ」の有力な候補として注目されるだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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