「ウッドデザイン賞2019」上位受賞作29点発表 森林資源に新しい可能性の光

2019年12月2日 00:01

日本は、国土面積のおよそ3分の2にあたる2500万haが森林に覆われた、世界有数の森林国だ。しかも、その内の500万haに及ぶ人工林が、すでに一般的な主伐期である50年生を超えている。この豊かな森林資源を有効活用することは、林業が抱える多くの課題を解決し、活性化させるだけでなく、我が国の経済にとっても、大きなプラスになることは言うまでもない。

 そんな中、今年で第5回目を迎えた「ウッドデザイン賞2019」の最優秀賞及び上位賞29点が11月20日に発表された。ウッドデザイン賞は、木材の利用と促進を目的に、木の良さや価値を再発見させる製品や取組について、特に優れたものを消費者目線で評価し、表彰する新しい顕彰制度だ。今年は全413点もの応募作品があった。

 栄えある最優秀賞「農林水産大臣賞」に輝いたのは、 三菱地所株式会社〈8802〉らによる「日本初となる中高層木造ハイブリッド建築を実現する技術の実証」だ。

 これは、これまで低層の建築物にしか使われてこなかった木構造部材を中高層ビルに活用することで、木材利用の新たな可能性を見出そうとするものだ。国内初の高層10 階建ての集合住宅の建設にあたり、鉄骨架構を部分的に木質化。木造ハイブリッド化における構造性能や耐火性能、居住性能といった住まい手の安全や利便性の技術検証を行うとともに、工期短縮によるコストメリットも実現した。また、ここで培われた各種技術は住宅以外の分野への活用も想定できることから、木造建築における総合的な取り組みとして大きな評価を得た。

 優秀賞「林野庁長官賞」には、ライフスタイル部門から3点、ハートフルデザイン部門から6点の作品が選ばれた。いずれも、従来の木材利用を応用しつつ、枠にとらわれない柔軟な発想によって生み出されたもので、森林資源の可能性を感じさせるものばかりだが、その中でもライフスタイル部門の2作品はとくに目を引くものがある。

 木造注文住宅を手掛ける株式会社アキュラホームが今回受賞したのは、建築分野ではなく、木製品分野。日本の木造建築で培われてきた伝統的なカンナ削りの技法を応用した、「国産間伐材の木製ストロー」だ。杉やヒノキなどの国産間伐材を厚さ0.15mmにスライスし、独自の技法で巻き上げた。デザイン的にも美しく、機能的。しかも、国際的な廃プラ問題・脱プラの流れを受けている点も評価が高い。林業にとって間伐は不可欠な作業。しかし、間伐材は1トン8000円程度の低価格で販売されているのが現状で、産業衰退の原因の一つともいわれている。同社の木のストローは木材1トンから74万本のストローが製作可能で、杉、ヒノキだけでなく、松やシナ、楓、桜など、多様な地域材にも応用が利く。G20大阪会議など、国際的な場面でもたびたび使用されて世界からも注目を集めている製品だけに、今後の展開次第では、日本だけでなく世界中で使用される可能性も高い。そうなれば、間伐材の価値が向上するのはもちろん、林業の活性化にもつながる。

 また、同じくライフスタイル部門で受賞した、縁樹の糸プロジェクトによる「樹木から生まれた神秘のファブリック」も面白い。これは、木材チップを微粒子化し、繊維に加工したもので、さまざまなファブリック製品を作り出した。優れた吸水性と速乾性、消臭性、軽くしなやかなここちよさが特徴で、家庭で洗濯も可能。日本の新しいオーガニック製品として、これから注目を集めそうだ。また、スギ、ヒノキ、ケヤキなど多様な樹種から制作ができるため、林業従事者だけでなく、生活者への訴求もしやすい。消費者目線での新たな木材利用の好例として期待されている。

 他にも、上位受賞した29点は、いずれもオリジナル性の高い製品で、木材利用の新たな可能性を感じさせてくれるものばかりだ。これらの作品は、12月5日から7日に「東京ビッグサイト」で開催される日本最大級の環境展示会「エコプロ2019」内に設置された「ウッドデザイン賞2019特設ブース」で一堂に展示される。日本の林業、木材利用の明るい未来を感じられるイベントになりそうだ。(編集担当:藤原伊織)

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