東工大、マイクロ波によるバイオマスの超急速熱分解に成功 低炭素社会実現に期待

2019年11月28日 11:24

 東京工業大学と産業技術総合研究所(産総研)は25日、半導体式マイクロ波発振器等を使い、マイクロ波によるバイオマスの超急速熱分解に成功したと発表した。研究チームでは、再生可能エネルギーと組み合わせることによって、CO2を排出しない低消費電力で効率的なバイオマスの活用が可能になり、低炭素社会の実現に大きく貢献できるのではないかと期待している。

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■バイオマスと低炭素社会

 現在、地球温暖化が急速に進んでおり、低炭素社会の実現はもはや待ったなしだ。バイオマスの活用はこの低炭素社会の実現のために欠かせない。

 バイオマスは、成長する過程で大気中のCO2を吸収しているため、バイオマスからCO2が排出されたとしても、大気中のCO2の総量としてはニュートラルだと、考えられる。

 特にバイオマスのなかでも、建築廃材、食品廃棄物等の廃棄物や稲ワラ、間伐材等の未利用の資源は食糧問題等との関係から注目されている。しかし、これらのバイオマスを活用するためには、まずは熱等を使って分解しなければならない。

 ところが、バイオマスは熱伝導率が低く、水分も多く含んでいる。そのため、従来の熱伝導によって間接的に加熱する方法では、効率化のため、バイオマスを微粉末化して熱伝導率を高めたり、加熱を助けための熱媒体を加えたりする必要があった。

■半導体式マイクロ波発振器による超急速熱分解

 そこで研究チームは、バイオマスを、直接的に、より効率的に加熱することができるマイクロ波による加熱に着目した。マイクロ波による加熱は家庭用電子レンジでも使われている。

 しかし、家庭用の電子レンジでも使われている従来のマグネトロン式マイクロ波発振器では、マイクロ波を精密に制御することは難しく、効率的に加熱するためには、炭素、シリコンカーバイド(SiC)等のマイクロ波を高効率で吸収して発熱する熱媒体を加える必要があった。

 そこで研究チームは、マイクロ波の精密制御に適した半導体式マイクロ波発振器等を使い、バイオマスの温度や化学的変化に応じて、マイクロ波を精密に制御し、加熱の効率を高めた。その結果、特別な熱媒体を加えなくとも、稲ワラを12秒以内に600度以上にまで急速加熱することに成功した。その昇温速度は毎秒330度にも達した。

 研究チームではこの技術を、太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギーと組み合わせることで、CO2を排出せずに、低消費電力で高効率なバイオマスの活用が可能になり、低炭素社会の実現に大きく貢献できるのではないかと考えている。

 今回の研究成果は、英国王立化学協会の「Green Chemistry(グリーン・ケミストリー)」オンライン版に11月22日に掲載された。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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