1滴の血液から13種類のがんを検出する技術 東芝が開発

2019年11月25日 19:14

 東芝は25日、血液中に存在する「マイクロRNA」という物質の濃度を測定することで、13種類のがんを検出する技術を開発したと、発表した。東京医科大学と国立がん研究センター研究所との共同研究の成果。この技術を使えば、1滴の血液から2時間以内にがん患者を識別することができるといい、東芝は2020年から実証実験を開始する。

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 マイクロRNAは体の中で遺伝子やタンパク質を制御している物質で、約2500種類ある。近年、血液中のマイクロRNAの種類と量を調べると早期がんを発見できる可能性があることが報告され、がんの診断に活用できるのではないかと注目を集めている。

 東芝は、採取した血液から抽出したマイクロRNAを検査する小型機器を開発。東京医科大と国立がん研究センターが持つマイクロRNAに関するデータなどをもとに、がん患者とがんを発症していない人を99%の確率で識別することに成功した。

 判定できるがんは、胃がんや肺がん、乳がんなど患者の多いがんのほか、脳腫瘍やすい臓がん、肉腫など発見しにくいがんを含めて13種類。研究では、がん細胞がまだ粘膜にとどまっているステージ0の段階の早期がんも検出した。ただ、今回の研究ではがんの特定まではできておらず、今後、東芝は特定のがんを簡単に、高精度で検出する検査方法の開発を目指す。

 がん治療では早期発見と早期治療が重要とされる。治療が難しいといわれる肺がんの場合、ステージ2の5年生存率は約60%だが、ステージ0であれば97%というデータもある。東芝は「マイクロRNA検出技術を用いて、高い精度で早期がん発見が期待できる。それによって、早期治療による患者の生存率とQOL(生活の質)の向上に貢献できる」としている。

 東芝は経営危機に陥っていた2016年に医療機器事業から撤退したが、2018年に発表した「東芝Nextプラン」で医療事業に再参入することを表明した。

 同社は、今回の技術の詳細を12月3日から6日まで福岡市で行われる「第42回日本分子生物学会年会」で発表する。

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