南鳥島周辺の堆積物、1100万年前の天体衝突で レアアース調査中に判明 早大や東大らの研究
2019年11月25日 08:05
再生可能エネルギー技術やエレクトロニクス、医療技術など幅広い産業分野で不可欠なレアアース(希土類)。生産において中国が寡占状態にあるなか、排他的経済水域(EEZ)が世界第6位の日本もレアアース資源量の把握に向けた調査を続けている。海洋研究開発機構らの研究グループは21日、南鳥島周辺海域の深海で採取した堆積物を分析した結果、約1,100万年前の中新世代に起きた天体衝突が原因のものであることが判明したと発表した。
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■約1100万年前の天体衝突が原因
研究を行ったのは、海洋研究開発機構、東京大学、神戸大学、千葉工業大学、九州大学、東京工業大学、早稲田大学の研究者から構成されるグループだ。海洋調査船みらいが2014年10月に南鳥島周辺の深海で採取した試料に、「エジェクタ層」と呼ばれる特異な堆積物が含まれていることが判明した。
エジェクタ層は、希少金属(レアメタル)の一種オスミウム(Os)の同位体比が異常に低い値をとる特殊な堆積層だ。地球上に衝突したいん石や被衝突物に由来する粒子がエジェクタ層に多数含まれていると考えられている。オスミウムの同位体比から、今回発見されたエジェクタ層は約1,100万年前のものだと判明した。同時代に誕生したと考えられる大きなクレーターが陸上に存在しないため、未発見の天体が地球に衝突した証拠だと予想される。
■レアアース生産を目論む日本
日本のEEZにはレアアースに富む堆積物(レアアース泥)が分布することが、2011年の調査でも明らかになっている。そのため、レアアース泥の分布や成因を解明する目的で、2013年から調査が毎年実施されている。南鳥島南方約250キロメートル海域でも、世界需要の数百年分に相当するレアアース資源の存在が確認されている。
レアアース泥の成因解明の鍵となる生成年代だが、未解明のままだ。レアアース泥の生成年代を調査する過程で、今回の発見へとつながったという。
生物が大量に絶滅した時期は、少なくとも11回推定されている。もっとも年代の新しいのが約1,160万年前であり、今回明らかになった天体衝突との関連があるとみられる。
研究グループは今後、ほかの海域の堆積物を調査し、同時期に発生した天体衝突の解明に向けて研究を続けるとしている。
研究の詳細は、英科学誌Scientific Reportsにて20日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)