海ぶどうは単細胞生物だが、植物の葉と似た構造を持つ 沖縄科技大の研究
2019年11月23日 14:29
沖縄の食品として有名な海ぶどうは、実は単細胞生物である。ぶどうのような房とツタの部分が明瞭に分かれているように見えるが、そのすべてが1つの細胞からできているのだ。沖縄科学技術大学院大学による今回の研究は、そんな海ぶどうの、単細胞生物でありながら複雑な多細胞の植物と似た構造が、遺伝子の発現によって作り分けられていることを明らかにした。
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海ぶどうは沖縄県の特産品であり、名前の通り、ぶどうに似た粒がついた房を持つ海藻である。食味としては、ぷちぷちした食感があり、最近では海外でも人気が出始めている。
さて、海ぶどうは栽培植物であり、温室で栽培される。栽培された海ぶどうは最大で1メートル以上の大きさに成長することがあるが、その状態でもなおたった1つの細胞からなる単細胞生物である。
そこでシンプルな問題が浮かぶ。なぜ、海ぶどうにおいてはたった1個の細胞がこれほどまでに複雑な形を作ることができるのか、ということだ。
もう1つ、派生的な問題として、それが解明されれば、海ぶどうの食用養殖技術が向上するという期待がある。海ぶどうの養殖では、形の悪い海ぶどうができてしまうことがあるが、その原因などもよく分かっていないのである。
研究チームは2019年3月に海ぶどうのゲノムの解析を行ったのだが、今回の研究ではその解読したゲノム情報を利用して、海ぶどうのツタの部分と房の部分、それぞれからRNAを抽出、そして超並列シーケンサーを使ってそれぞれの部位で機能している遺伝子を検出した。
結果として、海ぶどうの持つ9,311の遺伝子のうち、ツタ状部分では1,129種類、房部分では1,027種類が発現しており、また光合成などの機能は房部分で発現していたという。
研究の詳細は、Development, Growth & Differentiationに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)