理研と慶大、110歳以上の高齢者から特殊な免疫細胞の増殖発見 抗原が原因か
2019年11月16日 20:49
厚生労働省によると100歳以上の高齢者は約7万人にも及ぶという。その一方で、110歳以上の高齢者は146人しかいない。理化学研究所(理研)と慶応義塾大学の研究者から構成されるグループは、110歳以上のスーパーセンチナリアンが、特殊な細胞を血液中に多くもつことを発見した。
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■免疫力が極端に高いスーパーセンチナリアン
110歳に達した特別長寿の人たちは、スーパーセンチナリアンと呼ばれる。老化に伴い免疫力が低下すると、がんや感染症などのリスクが高くなる。だがスーパーセンチナリアンは高齢でも免疫力が高い状態を保つと考えられる。どのように免疫力が保たれるかは研究対象だが、数少ないスーパーセンチナリアンの免疫システムは、これまでほとんど研究されてこなかった。
今回、長寿研究を専門とする慶応義塾大学のグループと、分子レベルの解析を専門とする理研のグループが共同で、血液中の免疫細胞の解析を実施した。スーパーセンチナリアンと、50歳から80歳までの各グループの血液中から免疫細胞を取り出し、解析を行った。その結果、「T細胞」と呼ばれる免疫細胞の割合がスーパーセンチナリアンでは高くなっていることが判明した。
■メラノーマを排除する役割をもつ特殊な免疫細胞
T細胞にはほかの免疫細胞を助ける細胞と、がん細胞などを殺す細胞の2種類に大別され、がん細胞を殺す特殊なT細胞が、スーパーセンチナリアンでは血液中に多く含まれることも明らかになった。この特殊な免疫細胞は特定の抗原による刺激で増殖した可能性があると、研究グループは解析により考察している。だが、どの抗原が原因でこの免疫細胞が増殖したのかや、増殖と老化との関連など不明な点も多く、さらなる研究が必要だとしている。
マウスを使った実験では、がん細胞を殺す特殊な免疫細胞によって皮膚がんの一種であるメラノーマの排除が確認されているなど、老化や長寿における役割の解明が期待されるとしている。
研究の詳細は、米科学誌Proceedings of the National Academy of Sciencesにて13日にオンライン掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)