マテリアルズ・インフォマティクスで解釈可能な材料開発を実現 NECや東北大
2019年11月3日 21:39
AIと材料化学を融合させた「マテリアルズ・インフォマティクス」は新しい材料、素材の開発の観点から注目されている。さらに、それとロボティクス技術を合わせることで完全に自動で実験を進める試みがなされてきた。NECと東北大学、メリーランド大学の共同研究グループは10月31日、それらの技術を用いてスピン熱電材料の性能向上を実証することに成功したとに発表した。
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近年は機械学習が広い分野で導入されトレンドとなっているが、自然科学領域においても例外ではない。その一つが、機械学習を用いて材料開発を行うマテリアルズ・インフォマティクスである。これまでは大量の実験とデータ取得を人の手で行う必要があったが、機械学習の導入でその効率化を図る試みがなされてきた。
さらに、マテリアルズ・インフォマティクスにロボティクス技術を融合することができれば、完全に実験を自動で行うことができる。NECと東北大学、メリーランド大学の共同研究グループは、実験の完全自動化をスピン熱電材料において導入することを試みてきた。
しかし、問題点として実験データに「不完全性」があり、どの要因が本当に目標とする物性値と因果関係があるかが判断しにくいというものがあった。その結果、数多くの要因に対して順に実験を行う必要があったため、材料開発の効率は上げられなかった。
そこで共同研究グループは実験データだけでなく、シミュレーションから得られる計算データも機械学習に取り込むという手法を採用。その結果、メインとなる要因を抽出することができた。さらに、それによって得られた機械学習モデルに、物理や化学の専門家の考察も取り込んだ。専門家の考察によってさらに要因の絞り込みが可能となり、実験効率が大幅に向上した。
今回のスピン熱電材料はあくまで応用事例の一つである。共同研究グループが開発した手法を用いることで、材料の特性向上の要因における優先順位などが、解釈可能な形で得ることができる。そのため、実験における知見を深めながらも新材料の探索を効率化できる可能性が今回の研究成果で示されたと言える。
今回の研究成果は、10月30日付の「Nature Partner Journal Computational Materials」のオンライン版に掲載された。