天の川銀河の100倍のスピードで星を生み出す遠方銀河を発見 米大学
2019年10月30日 08:16
地球から100億光年以上離れた遠方銀河は、ビッグバンの発生後に誕生した初期の天体である。地球からの観測が困難であることから、天文学者は巨大遠方銀河をヒマラヤ山脈の未確認動物イエティになぞらえている。「宇宙のイエティ」ともいえる巨大遠方銀河を偶然発見し精査したところ、天の川銀河の100倍以上のスピードで星が誕生していたことが判明したと、米アリゾナ大学が22日発表した。
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■毎年太陽300個相当の星を生み出す巨大銀河
アリゾナ大学の研究者から構成されるグループが発見した銀河は、ビッグバンが発生して10億年から20億年後に誕生したと考えられる。この銀河では毎年、太陽300個分の星が誕生しているという。
さまざまな光の波長で微かな光が放射されていることを、研究グループは偶然発見したものの、放射された源となる銀河は確認できなかった。そこで国立天文台が運営する南米チリ・アタカマ高地のアルマ望遠鏡を活用したところ、1つの天体から光が放射されていることが確認され、これが遠方銀河だと判明した。研究グループがこの銀河で星が生み出されるスピードを確認した結果、天の川銀河の100倍以上の速度であることが明らかになった。
■アルマ望遠鏡が明らかにした若い巨大銀河の謎
今回発見された遠方銀河のような宇宙誕生初期の銀河は、宇宙の進化を知るうえで貴重な情報となる。最大級の銀河のいくつかは極端に速いスピードで成長することが判明したものの、理論的な理解が進んでいないという。
成熟した巨大銀河は宇宙の年齢の10%程度の年月が経過しないと確認できない。さらに星が形成中である巨大遠方銀河が確認されないという謎が、天文学者を悩ませた。
米航空宇宙局(NASA)が運用するハッブル宇宙望遠鏡でも、小さな遠方銀河が発見されているが、これらの成長スピードは謎を解明できるほど速くない。
研究グループはそこで、66もの電波望遠鏡が作り出す干渉計であるアルマ望遠鏡を活用した。アルマ望遠鏡は、遠方銀河など初期宇宙の天体観測を目的とする。研究グループはこの望遠鏡を用いて、偶然にも初期宇宙の巨大銀河を確認し、なぜこれまで発見されなかったかの謎が解明された。若い巨大銀河内部で誕生する星の熱によって塵が放射された光を観測し、大量の塵が巨大銀河を覆っていることが確認された。
研究グループは今後、NASAが2021年に打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって、この天体を詳しく調査する予定だ。
研究の詳細は、Astrophysical Journalにて22日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)