ヤマハ発が電動低速車を使ったMaaS実現へ本腰 実証実験や保険開発で連携

2019年10月29日 11:40

 ヤマハ発動機(静岡県磐田市)は28日、電動小型低速車両で市内を巡回して市民の移動のサポートをするサービスの実証実験を、島根県雲南市で開始した。また同日、三井住友海上火災(東京都千代田区)とMS&ADインターリスク総研(同)との間で、低速車両を使ったMaaSの実現に向けた協定を締結。ヤマハ発動機は、自社が開発する低速車両を使った次世代モビリティサービスの事業化に向けて、取り組みを本格化させる。

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 雲南市の実証実験は、ヤマハ発動機と竹中工務店(大阪市中央区)、NPO法人ETIC.(東京都渋谷区)が共同で12月6日まで実施。ゴルフカートをベースにした電動小型低速車両(グリーンスローモビリティ)を使い、時速20キロ未満で市内の駅や病院、スーパーなど巡回する約4キロのコースを走る。定員は7人で、運行は2台。

 雲南市は地域の高齢化にともなう課題の解決に積極的に取り組んでおり、住民主導の医療ネットワークの構築や若年層の移住・起業の増加といった成果を上げている。ヤマハ発動機も4月に交通課題の解決と事業創出のため、同市と包括連携協定を結んだ。

 実証実験で使われるグリーンスローモビリティは、高齢者や観光客らを乗せて短い距離を移動するのに適し、環境にもやさしいとして国土交通省や環境省が普及を推進している。ヤマハ発動機などは、実証実験を通じて巡回サービスへのニーズや運用体制の課題などを検証。サービスの実用化の方向性について探る。

 また、ヤマハ発動機と協定を結んだ三井住友海上とMS&ADインターリスク総研は、雲南市の実証実験をもとに、低速車両が公道を走る際の危険性や安全対策などについて研究。低速車両を活用したMaaSの実現に向けて、保険商品やリスク軽減のためのシステムなどの開発に取り組む。

 ヤマハ発動機では「近年、高齢化の進展によって、車の運転に不安を感じる高齢者が増える一方、地方ではバスやタクシーなど地域公共交通機関の経営環境が悪化している。こうした状況の中で、移動に制約のある交通弱者向けの施策やサービスが求められており、課題解決のために低速車両を活用したMaaSの実現に各社と協力して取り組んでいきたい」としている。

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