アッカド王朝滅亡の理由をサンゴ化石から解明 北大などの研究
2019年10月25日 08:59
メソポタミアのアッカド王朝は、一説に人類史上最初の帝国とも言われる。約4,600年前に勃興し、そして約4,200年前に滅亡したのだが、その原因をサンゴの化石の分析から突き止めることに、北海道大学などの研究グループが成功した。
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研究に参加しているのは、北海道大学大学院の渡邊剛講師(NPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所理事長)、渡邉貴昭博士後期課程生、九州大学大学院の山崎敦子助教(喜界島サンゴ礁科学研究所長兼副理事長)ら。
アッカドはメソポタミア文明における最初の統一国家であったとされる。定義の問題ではあるが、一説によれば史上最初の帝国と言われるゆえんだ。しかしその歴史的重要度に比して、研究はあまり進んでいない。最大の理由は、首都であった都市アッカドがいまだに発見されていないからである。
ただ、アッカドが滅びた原因は気候変動にあったらしい、ということは分かっている。そもそもメソポタミアは夏は乾燥しており、冬に雨季が来るという環境である。その水を利用した天水・灌漑農業によってアッカドも栄えた。
今回の研究では、月レベル以上の時間解像度で昔の気候を復元できる、造礁サンゴの化石の骨格が用いられた。アラビア半島・オマーン北西部の沿岸で発見された造礁性サンゴの化石群を研究室に持ち込み、化学分析を行ったところ、約4,100年前の化石サンゴから、この時代の現地の気候が冬に寒冷化していたことが分かった。
またさらに、当時西アジアのシャマールと呼ばれる地域風の頻発があり、これが原因でメソポタミアの乾燥化を招いていたということも分かった。
これらの異常気象は数百年に渡って続いたが、約3,600年前には終息していたらしい。気候の安定したメソポタミアでは再び繁栄の時代が始まったのである。
研究の詳細は、地質学の専門誌Geologyに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)