シロアリの進化系統樹を再構築、亜科の系統関係を明らかに 沖縄科技大の研究
2019年10月20日 20:49
シロアリの進化の歴史に関して新たな発見があった。シロアリ塚の中に菌園を作る珍しい高等シロアリ、スファエロシロアリ亜科とキノコシロアリ亜科の2つの系統の位置付けに関するものだ。研究は、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の進化生物学者らによって行われた。
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シロアリと言ったらまずどんなイメージを思い浮かべるだろうか。木造家屋を蝕む害虫、あるいは森林の分解者。いずれの理解も誤りではない。ただ、シロアリの仲間というのは3,500種ほどが知られており、実のところ木材を餌にするシロアリはその全体の中では限られた一部である。
シロアリは一番大きな分類で分けると高等シロアリと下等シロアリに分けられる。何が高等で何が下等かというと、進化の系統上、下等シロアリの方が古いのである。種数としては高等シロアリの方が下等シロアリよりも圧倒的に多く、そして木材を分解するシロアリは下等シロアリの中にしかいない。
高等シロアリの食性は多様である。蟻塚の中で農業のようなことをやる種もいて、かれらは菌園でキノコを育てて食べる。その代わり、下等シロアリが消火器管内に共生させている、セルロースを分解するための原生生物をかれらは持っていない。
さて、今回の研究では、遺伝子の転写産物であるRNAを網羅的に解析し、世界中のすべての主要な系統を網羅した55種のシロアリの、4,065種類の遺伝子を比較して系統樹を構築した。このかつてない大規模な高精度の樹形図推定により、2つの高等シロアリのグループ、スファエロシロアリ亜科とキノコシロアリ亜科が系統樹上で並列に位置付けられることになった。
従来の解釈では、腸内に原生生物を持つシロアリからキノコを栽培するシロアリが進化し、さらにその先に普通の腸内細菌しか持たないシロアリが進化したと考えられてきた。しかし、実際にはそうではなく、また菌園を作るという特性が発生したのは、腸内から共生原生生物が失われて数百万年ののちであったということも分かった。
研究の詳細は、Current Biology誌に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)