人工光合成への応用も 太陽光で働く水分解光電極を開発 東工大など
2019年10月19日 13:55
東京工業大学は17日、電気エネルギーを印加することなく、太陽光の照射だけで水が分解される新たな光電極材料を開発したと発表した。水分解による水素の製造だけでなく、二酸化炭素の還元等の人工光合成への応用も期待できるという。
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■半世紀も研究が続く光電極
太陽光に含まれる可視光を利用して水を水素と酸素に分解する仕組みが光電極だ。光の照射により化学反応を発生させる光触媒とともに、太陽エネルギーを化学エネルギーへと変換する人工光合成のひとつとして、光電極は注目されている。
光電極には、太陽光発電や発光ダイオード等に使用されるn型半導体が必要だ。だが電気エネルギーの助けをほとんど借りず、水を安定的に酸化する材料は、研究された半世紀間でもほとんど知られていないという。
■二酸化炭素還元への応用も期待
東京工業大学、豊田工業大学、近畿大学の研究者から構成されるグループは、鉛、チタン、酸素、フッ素からなる酸フッ化物が、光電極として求められる特性をすべて満たした材料であることを見出していた。だが水中での反応活性の向上が課題になっていたという。
研究グループは、透明導電性ガラスの上に酸フッ化物を積層(ラミネート加工)することで、光吸収により電子と正孔が効率よく水に受け渡せる機構を発見した。酸フッ化物に生じた電子と正孔が長寿命であり、光エネルギーを変換する材料として優れていることが判明したという。この機構を用い、酸フッ化物による水分解に世界で初めて成功した。
研究グループは今後、光電極の構造や電解条件を最適化し、さらなる性能向上を目指すという。また水分解だけでなく、二酸化炭素を還元するなど幅広い人工光合成への応用にも期待を寄せている。
研究の詳細は、米化学誌Journal of the American Chemical Societyオンライン版にて5日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)