イネの収量に作用の遺伝子、機械学習活用し同定 収量増加に期待 理研など
2019年10月19日 10:04
イネの収量増加は稲作に携わる人たちにとって共通の望みであり、遺伝子からのアプローチも多くの研究で行われてきた。龍谷大学、名古屋大学、理化学研究所の共同研究グループは17日、従来の遺伝子同定法に機械学習の手法を組み合わせることにより、イネの収量に関わる遺伝子を同定したと発表した。
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収量に関わる遺伝子の同定は極めて重要視されてきたが、関連する要素が多く複雑であることから困難であるとされてきた。イネの丈や穂の数、構造だけでなく、発芽から花が咲く前の日数なども収量と関係があることが知られている。したがって、それらの要素を総合的に解析することが必要であり、従来の遺伝子同定手法では難しいのが現実であった。
今回の共同研究グループでは、従来の遺伝子同定手法であるゲノムワイド関連分析(GWAS)に機械学習を組み合わせて同定を行った。GWASは、イネ個体の特定の特徴と関連するDNA配列の違いを統計的に検出する手法である。
そのGWASによってまずは169品種のゲノム情報を得た。続いて、主成分分析と呼ばれる機械学習の手法によって、イネの収量に大きく関わる「草型」の指標となりうる特徴量を抽出した。その特徴量に関係のあるDNA配列の情報をGWASの結果と統合することで、イネの収量に関連する草型に関わっている遺伝子を同定することに成功した。
近代になって品種改良されてきたイネの品種の多くは、丈の低い「穂数型」と呼ばれるタイプだ。しかし、穂数型のイネは、従来品種に多く丈の高い「穂重型」と比べて多量の肥料を必要とする。近年では環境面からより少ない肥料での栽培が求められているため、穂重型の中から収量の多い品種を選抜することが望ましい。今回の結果はその点でも大いに役立つものである。
このGWASと主成分分析を組み合わせた手法はイネだけでなく、他の植物種にも応用可能である。さらに、収量だけでなく病気や環境への耐性などの栽培に大きく関わる遺伝子同定への利用も期待できる。
本研究の成果は、日本時間1日付で米国科学アカデミー紀要のオンライン版に掲載された。