昆虫に似た社会を持つデバネズミの進化の謎 総研大などの研究

2019年10月16日 18:37

 アリやハチが社会を作る性質を真社会性という。真社会性を持つ生き物で、唯一哺乳類に分類されるものがデバネズミの仲間である。今回の研究は、そのデバネズミの進化の謎について迫るものだ。研究は、総合研究大学院大学の沓掛展之教授と、プリンストン大学の羽場優紀大学院生によって行われた。

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 真社会性は、生物が形成する社会の中で(ヒトのそれは別として)もっとも複雑なシステムを持つものである。代表的なのはアリとハチの社会だが、シロアリ、カメムシ、コウチュウ、それにテッポウエビの一種などにも見られ、哺乳類としてはデバネズミ科のハダカデバネズミとダマラランドデバネズミだけが真社会性を持つ。

 真社会性の種は、内部に不妊の階級を有し、個体間で役割分業のある大きなコロニーを形成する。ハダカデバネズミのコロニーは最大で270匹、ダマラランドデバネズミは最大で40匹ほどである。もっともそこまで大きいのは稀で、平均すると前者は75匹、ダマラランドデバネズミが11匹である。そして、両者の近縁社会性種(4種存在する)の群れのサイズの平均は、7~9.9匹だ。

 真社会性生物はどのように発生するのか、というのは大きな謎である。可能性としては、単独性の生き物であったものが何らかの変異を生じて跳躍的に真社会性生物になる、という可能性も否定されてはいない。

 今回の研究は、ハダカデバネズミとダマラランドデバネズミのそれぞれにかかる淘汰圧を検証し、両種の進化の系譜に違いがあったかどうかを検証する、というものである。

 分析には、ベイズ統計学を用いた系統種間比較法という、今回の研究のために新たに開発された統計的処理が用いられた。検証の結果としては、ハダカデバネズミには「よりコロニーのサイズが大きくなるように」淘汰圧がかかっていたが、ダマラランドデバネズミに関してはそのような淘汰圧はかかっていなかった、ということが分かったという。

 研究の詳細は、Evolutionary Ecologyに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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