楽天 ファッション ウィーク東京、開幕 トップバッターはYOSHIKIの「ヨシキモノ」

2019年10月15日 18:13

 2019年10月14日、「楽天 ファッション ウィーク東京(以下RakutenFWT)」が公式会場の渋谷ヒカリエで開幕した。    2016年7月から2019年3月まで、計6シーズンにわたり東京ファッションウィークの冠スポンサーを務めてきたアマゾンジャパンに変わり、楽天が冠スポンサーを初めて務める東京ファッションウィーク。10月18日までの5日間で約40のブランドがインスタレーションやランウェイで最新コレクションを発表する。    メンズブランドが目立つ今シーズン、常連である「ディスカバード(DISCOVERED)」や「ミスター・ジェントルマン(MISTERGENTLEMAN)」、東京ファッションアワード 2019(TOKYO FASHION AWARD 2019)を受賞し、昨シーズン初めてのランウェイを行った「ノブユキマツイ(Nobuyuki Matsui)」、そして2014年にパリでコレクションを発表した「ダイエットブッチャースリムスキン(DIET BUTCHER SLIM SKIN)」も参加する。 ヨシキモノ(YOSHIKIMONO)

 RakutenFWTのオープニングを飾ったのは、X JAPANのYOSHIKIによる着物ブランド「ヨシキモノ(YOSHIKIMONO)」。3年ぶりのショー開催となった今回のコレクションは、伝統的な着物にロックやパンクの要素を加えてエッジを利かせた。    ショー前半は着物のテキスタイルやディテールを使ったドレスを披露。チューブトップのミニドレスはアニマルパターンや強いコントラストのカラーパレット、フューチャリスティックなシルバー使いで、大胆で挑発的でありながら、着物の帯や袖のディテールを取り入れ、上品さも感じさせる。そして後半は伝統的な着物に斬新なパターンを取り入れたシリーズを発表。    中でも印象的だったのは「進撃の巨人」やスタン・リー原作のYOSHIKIを主人公にした漫画「ブラッド・レッド・ドラゴン」のワンシーンをパターンとして取り入れたもの。これは、コンサートなどで来てくれる世界中のファンの多くが、日本文化としてアニメを好きだという事実にYOSHIKIが気づき、日本文化へのリスペクトを込めて着物で表現したのだという。また、化学染料を一切使用しない藍染めを用いるなど、サステナビリティにもフォーカスを当てたコレクションとなった。フィナーレではYOSHIKIがクリスタルグランドピアノで演奏し、真っ赤な花びらが舞う中モデルが登場するという演出を行い、「ショーに来てくれた人に何らかの刺激を与えたい」という想いを自ら体現した。    ショー終了後の取材では、先日の台風でスタッフや関係者が来られなくなるというハプニングがあったことも明かし、「これまで周りの人やファンの方々に支えられて、今の自分がある。助け合いの大切さというのは本当に実感しているので、自分もその恩返しとしてボランティアやチャリティーで支えたい。一日でも早い復興を願っています」とコメントした。   「ヨシキモノ」2020春夏コレクション ティートトウキョウ(tiit tokyo)

 「ティートトウキョウ(tiit tokyo)」は「Blur(ぼやけた、かすんだの意)」をテーマに、見慣れた都市空間の中にある美しさとの対話を表現した。デザイナーの岩田翔と滝澤裕史にとって、今シーズンはコレクションへの向き合い方が大きく変わったシーズンだという。これまでは真っ白なキャンバスに絵を描く感覚だったのが、今シーズンは“すでにあるもの”の上に絵を重ねていくようにコレクションを紡ぎ上げていった。    その、“すでにあるもの”というのは普段生活をしていく都市空間であり、窓ガラスに映った風景や、雨の日の景色、水たまりに映った街並など。そしてそれらを辿るようにデザインを創っていった。具体的には、市松模様を細かい刺繍のステッチで表現したり、手作業で紡いだグラデーションラミネートニットなど、様々なテクニックや手の込んだ繊細な手仕事、素材を組み合わせて叙情的なコレクションに仕上げていた。    今シーズン、メンズのルックが増えたが、全体としてはまだ10%くらいの比率で特にメンズに注力しているわけではないという。“日常の中にある服”を考えた時に、ウィメンズだけではなくメンズもあることが自然に思われるので、今後もどちらでもコレクションを作っていきたいと、岩田氏は語った。   「ティートトウキョウ」2020春夏コレクション タチアナ・パルフェノワ(TATYANA PARFIONOVA)

 東京でのコレクション発表は初となるロシアのブランド「タチアナ・パルフェノワ(TATYANA PARFIONOVA)」。ロシアのサンクトペテルブルグ市を拠点に活動し、ロシア州立博物館と数多くのコラボレーションを手がけるなど、芸術とファッションを融合させ、アーティストとしても高い評価を受けている。    そんなタチアナが今回のショーで披露したのは、絵画的な刺繍で見せる幼き頃の思い出と水面の美しさ。水草や蓮など、川の流れの中に浮かぶ植物や水面のきらめきを表現したドレスはまるでアート作品のように見る者の感情を揺さぶってくる。それはタチアナが実際に小さい時にみた風景。自然をこよなく愛し、刺繍をこよなく愛する彼女ならではの唯一無二の表現に、皆引き込まれていた。    タチアナは、「東京はとても興味深い場所で、ここでコレクションを披露できてとても嬉しかった。ブランドとしてはジャケットやパンツなどいろいろなアイテムがあるけれど、今回のショーではドレスだけに絞って絵画的なストーリーを伝えたかった」と語っていた。 ディスカバード(DISCOVERED)

 「ディスカバード(DISCOVERED)」は、ライブ形式のインスタレーションを開催。LisachrisとElto Klinhertz feat. UCARY & THE VALENTINEによるライブの中、会場にコレクションピースを展示するという新しい発表方法を見せた。    コレクションは、アメリカの哲学者ラルフ・ワルド・エマーソン(Ralph Waldo Emerson)の格言を引用し、「IF WE LIVE TRULY」をテーマに掲げてブランドのコンセプトである「Opposition mix up(逆のものをミックスするの意)」を再解釈。しわ加工したウール素材とナイロンを組み合わせたジャケットなど、異素材や相反するテイストを融合させた。また、現代美術作家の政田武史氏とのコラボレーションも発表。政田氏の絵画を取り入れたアイテムも披露した。 アクオドバイチャヌ(ACUOD by CHANU)

 RakutenFWTのオフィシャルスケジュールではないが、「アクオドバイチャヌ(ACUOD by CHANU)」もインスタレーションを開催。直前まで情報が出ないゲリラ的なコレクション発表であったが、実際に1か月くらい前に突然インスタレーションを行うことが決まり、デザイナー本人も急ピッチで準備を進めたのだという。    そして今回発表した7体は、全て販売されることのない1点もの。このインスタレーションのためだけに紡ぎ上げられた至極のアイテムだ。「愛と許し」をテーマにしたという今回のコレクション。イエス様の祈っている絵のプリントや、聖書の引用をアイテムにのせた。「ブランドを立ち上げて3年、表面的にうまくいっているように見えても数々の困難があった。だけどいろいろな人に支えられてここまでこれたので全てのことに愛と許しを持ちたかった。これからもポジティブな気持ちを持って前に進んでいくために、今回のショーは大切だった」と、デザイナーの李燦雨氏は語った。 マラミュート(malamute)

 RakutenFWT開幕前の10月11日には、人気ウィメンズブランド「マラミュート」がコレクションを発表。台風接近による雨の中、神宮外苑にある京都造形芸術大学のキャンパスの屋外でショーを行った。    巨大なオブジェをバックに披露した2020春夏コレクション。白やベージュ、ブラウンなどアーシーなカラーパレットの中に鮮やかグリーンが目をひく。チルデンやスポーツ素材、手編み風などの編み地を多く使用しながら、コシのある布帛とミックスするルックもあり、硬軟取り混ぜた秀悦な素材づかいが目をひく。カットロスを出さない無縫製アプローチ、再生繊維のキュプラやレーヨン混素材など、エシカルな工夫も。    日常にフォーカスを当てる詩論的アプローチでクリエーションをしてきた小髙真理デザイナー。今の空気をすくい上げる彼女の力を感じさせるコレクションであった。   「マラミュート2020春夏コレクション」 取材・文:アパレルウェブ編集部 東京のコレクション画像はこちら

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