働き方改革、管理職の業務量増加6割 管理職と人事の認識に食い違い

2019年10月15日 18:14

 現在多くの職場で働き方改革が取り組まれている。働き方改革の当初の目的は国際的にも批判を浴びている日本の長時間労働の是正であり、この点に関してマクロ統計を見ると一定の成果が見られるようである。しかし、その背後で現場に近い中間管理職の業務量が増大しており、本来の目的である労働生産性の向上が実現しているのかには疑問が残る状況だ。

 この点に関し人材サービスのシンクタンクであるパーソル総合研究所が「中間管理職の就業負担に関する定量調査」を3月下旬に実施、その集計結果を3日に公表している。

 集計結果によれば、2018年から働き方改革が進んでいる企業群と進んでいない企業群を比較すると、働き方改革が進んでいる企業群では、中間管理職自らの業務量が増加したとの回答割合が62.1%、進んでいない企業群では48.2%となっており、働き方改革が進んでいる企業群で管理職へのしわ寄せが顕著になっているようだ。

 中間管理職本人が課題と感じているものは、「人手不足」57.5%、「後任者不足」56.2%、「自身の業務量の増加」52.5%がトップ3となっている。一方、人事が考える中間管理職の課題では「後任者不足」は8位、「人手不足」は9位と低く、上位にランクしているのは「働き方改革への対応の増加」52.0%、「ハラスメントの対応の増加」42.7%、「コンプライアンスの対応の増加」38.7%などで中間管理職本人と人事の認識に食い違いが見られる。中間管理職本人は人材や時間の不足を感じているが人事の意識は法やリスクへの対応に偏っていると言える。

 抱えている問題について聞いた結果では、負担感が高い中間管理職では、「残業が増えた」47.7%、「仕事の意欲が低下した」23.8%、「学びの時間が確保できていない」63.0%、「時間不足から付加価値を生む業務に着手できない」64.7%などが多くなっており、中間管理職のモチベーションやスキルアップに悪影響が出ているようだ。

 人事に中間管理職への支援について聞いた結果では「特に行っていない」が24.0%となっており、約4分の1の企業で支援が行われていない。

 パーソル総合研究所主任研究員の小林祐児氏は「単に労働時間に上限を設けることが主流の現在の働き方改革では、逆に中間管理職の業務量の負担が増してしまうことが調査データから示唆されている」「より抜本的な改善フェーズに進むことが求められている」と分析している。(編集担当:久保田雄城)

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