クシクラゲの虹色の謎を解く特有のタンパク質を発見 筑波大の研究
2019年10月14日 17:36
クシクラゲは虹色に輝く美しい生き物である。筑波大学などの研究グループは、この虹色を生み出すクシクラゲに特有のタンパク質を発見、CTENO(テノ)64と命名した。
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研究に参加しているのは、筑波大学下田臨海実験センターの城倉圭大学院生、柴田大輔元研究員、同生命環境系の柴小菊助教、稲葉一男教授、そして基礎生物学研究所の重信秀治教授の研究グループ。
クシクラゲはクラゲという名であるが、いわゆるあのクラゲとは別のグループの生物である。100から150種ほどが知られており、水族館などでよく見ることができるが、実は生物の分類でどこに位置付けられるのか、最近までよく分かっていなかった。現在は有櫛(ゆうしつ)動物に分類されている。
クシクラゲの体において虹色に輝いているのは、櫛板と呼ばれている部分である。櫛板は、数万本の繊毛が束ねられ板状になっており、例えるなら船のオールのような構造をしている。それが体表に8列存在し、それで体の向きを変えたり、泳いだりする。
繊毛は直径わずか0.2ミクロンしかないが、クシクラゲはその束が1mmに達し、肉眼でも見えるほど巨大化している。虹色に輝くのは単にそういう物質だからというだけではなく、この繊毛の規則正しい配列が反射する光同士の干渉によって構造色を出すからである。
研究グループは、クシクラゲの一種カブトクラゲを繁殖させて長期飼育し、カブトクラゲの櫛板を単離するための生化学的な手法を確立することに成功した。そして遺伝子カタログを構築、櫛板に含まれるタンパク質を質量分析装置によって同定したところ、CTENO64が発見されたのである。
ちなみにCTENOとは櫛のことである。また、このCTENO64が欠損すると、カブトクラゲは正常に運動できなくなるということも分かった。
クシクラゲの櫛板の構造に対する理解は、フォトニクス分野への応用なども期待できるという。なお、研究の詳細はCurrent Biologyに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)