宝ホールディングス、バランスとれた事業基盤確立で連続最高収益更新へ挑む
2019年10月13日 10:32
宝ホールディングス傘下のタカラバイオは7日、「Cas9タンパク質」に関して、ゲノム編集に最適とされるGMPグレードの商品を発売した。ヒトや動物由来の物質を含まず、細胞へのダメージを低減するように最適化し、高い品質を担保したという。
【こちらも】東洋水産、新たな食文化の創造で売上高4500億円、営業利益315億円へ挑む
タカラバイオは、ゲノム編集に関連する応用分野を主力分野と位置付け、研究支援サービスを開発、事業の拡大を図っている。
宝酒造は、江戸時代後期の1842年に、京都伏見で四方(よも)卯之助が清酒の製造を開始したことに始まる。味醂、焼酎に進出し、1925年には「寶酒造株式会社」となった。1987年に宝酒造に商号変更し、2002年に持株会社体制へ移行、宝ホールディングスとなった。
2019年3月期の売上高は2,774億円。セグメント別の構成比は、焼酎、清酒、ソフトアルコール飲料、輸入酒、調味料などを扱う宝酒造が55.0%、米国のバーボンや英国のスコッチウイスキーなどの海外酒類事業と、海外日本食材卸事業を展開する宝酒造インターナショナルが28%、バイオ産業支援ビジネスと遺伝子医療事業を行うタカラバイオが12.9%、全社調整その他が4.1%を占める、宝ホールディングスの動きを見ていこう。
■前期(2019年3月期)実績
前期売上高は2,774億円(前年比3.5%増)、営業利益は前年よりも22億円増の178億円(同14.0%増)といずれも過去最高となった。
営業利益増加の要因としては、遺伝子医療事業が黒字転換したタカラバイオが19億円、ソフトアルコール飲料の好調で宝酒造が4億円、海外日本食材卸の好調で宝酒造インターナショナルが1億円の増益に対し、全社調整その他で2億円の減益による。
■今期(2020年3月期)計画で連続最高収益更新へ挑む
今期を最終年度とする中期計画を修正し、売上高は中計より50億円減の2,900億円(同4.5%増)、営業利益は3億円増の190億円(同6.7%増)と、全セグメント増収増益というバランスのとれた事業基盤確立により、連続最高収益更新へ挑む。(セグメント別の計画には全社調整その他を含まず)
●1. 宝酒造: 売上高1,590億円、営業利益62億円
・清酒、焼酎、調味料各カテゴリーで、技術により差異化された商品開発に注力し、和酒トップのポジションを盤石化。
・ソフトアルコール市場で缶チューハイのパイオニアとして、樽貯蔵熟成酒という宝酒造の強みを生かして独自のポジッションを構築。
●2. 宝酒造インターナショナル: 売上高834億円、営業利益50億円
・海外酒類事業は、清酒を中心に米国、中国での現地生産によるフレッシュな鮮度を生かした商品を提供。
・海外日本食材卸事業は、欧米未進出エリアへの拠点新設、既存拠点の拡充による卸ネットワークの拡大と物流効率化。
●3. タカラバイオ: 売上高360億円、営業利益62億円
・バイオ産業支援事業は、研究開発製造施設を拡充し、再生医療製品の受託製造事業を拡大。
・遺伝子医療事業は、がん細胞を攻撃する遺伝子改変T細胞療法の開発と、がん細胞に対する免疫を増強する腫瘍溶解性ウイルスの開発。
日本伝統の酒造りの技術と最先端のバイオ技術の革新を通じて、新しい価値を創造して世界へ貢献する宝ホールディングスの動きを見守りたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る)