ゲノム編集食品、年内にも流通始まる 厚労省の新制度運用開始

2019年10月8日 17:19

 1日、ゲノム編集食品に関する厚生労働省による新しい制度の運用が始まった。年内にもゲノム編集食品の流通が始まる見通だ。我々の食卓にゲノム編集によってつくられた食品が並ぶのもそう遠くないだろう。

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■ゲノム編集食品とは?

 ゲノム編集とは、高い確率で任意のDNAを編集できる技術だ。任意のDNAに関して、破壊や追加をすることができる。

 このゲノム編集技術を使いつくられた食品が、ゲノム編集食品だ。例えば、筋肉の増殖を抑える働きのある「ミオスタチン」という遺伝子を破壊してつくられた肉厚を持つマダイや、GABAを合成するGADと呼ばれる酵素の働きを高めてつくられた高GABAトマト等が、すでに開発されている。ちなみに、GABAは、アミノ酸の1種で、ストレスの緩和や血圧の上昇を抑える働きがあることで知られている。

■運用が始まった厚生労働省の新制度

 新制度では、このようなゲノム編集食品のうち、DNAを追加する形でつくられた食品に関しては、これまでの遺伝子組み換え食品と同様に、安全性審査とその表示が義務付けられる。

 しかしゲノム編集食品のうち、DNAを破壊する形でつくられた食品については届出だけで流通させることができ、安全性審査や表示も義務付けられていない。理由は、従来の品種改良等でつくられた食品と比べ、リスクが異ならないことや、区別することが技術的に困難であること等があげられる。

 届出を受理した場合、厚生労働省は遅滞なく届出者、開発者、利用したゲノム編集の技術や遺伝子改変の概要等をホームページ上で公開する。

 しかし、このような届出自体も任意であり罰則はない。ただし、届出が必要な場合に届出なければ、開発者等をホームページで公表する等のペナルティはある。

 食の安全に対する消費者の関心が高まっている現在、食品に関する情報の開示は重要性を増している。消費者庁では、消費者の選択に資するために、届出だけで流通させることが可能とされているゲノム編集食品についても、積極的に情報を開示していくことが望ましいとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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