フルヤ金属や京大、固溶ナノ合金の量産化技術を確立 様々な分野に応用
2019年10月4日 18:21
京都大学、フルヤ金属等の研究チームは1日、2種類以上の金属が原子レベルで混ざり合ったナノサイズの合金である「固溶ナノ合金」の量産化技術を確立したと、発表した。研究チームでは、触媒、電子材料、磁性材料、光学材料等さまざまな分野の需要に答えられることを期待している。
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■従来の固溶ナノ合金をつくる方法の問題点
金属塩を溶媒に溶かすと、金属イオンが生じる。この金属イオンは還元されると普通の金属原子に戻り、凝集して金属原子の塊をつくるのだが、この塊は、そのままでは凝集を続けて大きくなってしまう。そこで、保護剤で金属原子の塊の周りをコーティングして、凝集を止める。これが、従来おこなわれてきた「液相還元法」と呼ばれる方法だ。
しかし、この従来型の液相還元法で固溶合金をつくろうとすると、いくつか大きな問題点があった。
まず、金属イオンはその種類ごとに還元されやすさが異なるため、種類の異なる金属イオンはバラバラに還元されやく、固溶ナノ合金にはなりにくかった。
また、従来型の液相還元法では還元速度や還元時間をコントロールすることも難しかったため、固溶ナノ合金の粒子の大きさ等、構造や組成を制御することは困難だった。
■ソルボサーマル合成法(高温または高圧の溶媒を使う方法)の応用
研究チームはこれらの問題点に関して、高温・高圧下で複数種類の金属イオンを瞬時に同時還元し、その後、急速冷却して凝集を抑制することにより、解決した。
これによって研究チームは構造や組成が均一な1nm級の固溶ナノ合金をつくることに成功した。
これまでこのサイズの固溶ナノ合金は、工業的には得られていなかった。まさに画期的といえるだろう。
研究チームは、このような製造過程にフローリアクター方式を導入することによってその連続生産を可能にし、月間2~3kgの固溶ナノ合金の生産を可能にしたという。
またこれまで担持触媒は、まず触媒をつくり、次にその触媒を担体(触媒を固定する足場になる物質)に付着させるという、2段階を経てつくられてきた。しかし、研究チームは担体を最初から原料に混ぜ込むことでこれを1段階ですませ、製造過程を効率化した。
この技術を使えば異なる元素を原子レベルで自在に混ぜ合わせて、さまざまな固溶ナノ合金を量産することができる。研究チームは、排ガス浄化触媒、電極触媒、化学プロセス触媒、量子ドット等の触媒、電子材料、光学材料、磁性材料等の幅広い分野の需要に答えることができるだろうと語っている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)