ニホンザルも仲間と協力することができる 阪大の研究
2019年10月4日 13:22
霊長類の研究でよく名前が挙がるのはチンパンジーである。彼ら類人猿は色々な意味でヒトにもっとも近いからだ。いっぽうニホンザルは、日本では馴染みのある生き物だが、進化分岐図から言えば霊長類の中でヒトからは比較的遠い種である。
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以上のことからヒトとニホンザルの間の相違は大きく、例えばニホンザルは仲間と協力して行動する能力を持たないとこれまでは考えられていたのだが、それが間違いだったという事実を大阪大学の研究グループが明らかにした。
研究に参加しているのは、大阪大学大学院人間科学研究科大学院生の貝カ石優博士後期生、中道正之教授、山田一憲講師ら。
ニホンザルは分類で言うと霊長目オナガザル科マカク属に含まれる。マカクと言うのは主にアジアに分布するサルの仲間であり、その北限に暮らす日本固有種がニホンザルである。
ニホンザルは一般に攻撃性が高く、寛容性が低い。そして群れの順位関係が非常に厳しいことで知られる。例えばおいしい餌が示されると、順位の高いサルがそれを全て独占してしまう。そうしたことから、2頭が力を合わせて食べ物を手に入れる、といったような行動はとることができないと考えられていた。
今回の研究は、ヒモの両端で2頭のサルがヒモを引っ張ると餌が手に入る、という課題をクリアさせるという形で行われた。比較のために、ニホンザルの群れの中では寛容性が高いことで知られる淡路島ニホンザル集団と、寛容性が低い勝山ニホンザル集団の双方で実験が行われた。
結果として、淡路島ニホンザル集団は何度も課題を解決したが、勝山ニホンザル集団ではほとんど協力行動は見られなかったという。
研究の詳細は、国際学術誌Primatesのオンライン版に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)