ミツバチに寄生するバロアダニの全ゲノムを解読 沖縄科技大などの研究
2019年10月3日 18:57
蜂群崩壊症候群はミツバチに大量死を引き起こす現象である。原因はまだはっきりとは分かっていない(そもそも要因が一つであるとも限らない)のだが、一説にバロアダニというミツバチの寄生生物がウィルスを媒介するのではないかという。
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そのバロアダニの全ゲノム解読が行われた。沖縄科学技術大学院大学(OIST)生態・進化学ユニットの研究者たちが参加する研究プロジェクトだ。
蜂群崩壊症候群は、人間社会に対する大きな脅威である。一説に、地球からミツバチが消え去ると人類文明は4年で崩壊する、とも言われる。その仮定の真偽はさておき、例えば具体的には、アメリカにおいてミツバチに受粉を任せている農作物の総収穫高は、2000年の総計で150億ドルを越えるという。ミツバチは重要な花粉媒介者だからである。
バロアダニと呼ばれる寄生生物は2種類いる。もともとアジア原産で、トウヨウミツバチ(ニホンミツバチはその亜種である)の寄生虫だったのだが、20世紀になって人に飼われるミツバチが世界各地を移動するようになり、結果バロアダニは欧州に広まった。さらに20世紀後半に南北アメリカ大陸に広まり、セイヨウミツバチの生存に対する深刻な脅威となった。
ゲノム分析の結果として、2種のバロアダニはそれぞれに99.7%のDNAを共有し、例えば外見などからはまったく見分けることができないという。しかし進化戦略の上から分析すると、両者はやはり別々の存在であり、種によって異なる寄生戦略を取っているのではないか、という。
2種類の寄生虫がそれぞれに異なる寄生戦略を取るために、ミツバチの側としてはそれに対する抵抗性を獲得することが難しいのではないか、というのが今回の研究から導出された結論である。
なお研究の詳細は、Communications Biology誌に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)