ディーゼルエンジンの将来は?
2019年10月3日 16:08
9月24日、日本経済新聞にホンダがディーゼルエンジンの開発から撤退するとの記事が掲載された。記事によると、ホンダは30年までに世界販売の3分の2(約65%)をHVやEV等の電動車にする方針で、欧州では25年までに全モデルを電動車にするという。
●ホンダの内燃機関燃焼技術
ホンダの燃焼技術は素晴らしいものがある。特に単室容量が小さな二輪車の小型エンジン技術は、内燃機関燃焼理論では基本中の基本で、追随を許さない。
中国の様な内燃機関の技術レベルでは、先進国にとても追いつくことは望めない。そこで、中国は電気自動車(EV)に新たな土俵を求めて、党主導の強権発動でEVに狂奔しているのが実情だ。
確かに、世界規模で電気自動車に注目が集まり、中国市場などの市場規模を見れば、魅力的に映る。
失礼だがホンダのディーゼルエンジンに、それ程のポテンシャルは感じないが、部外者の視点から見れば、折角の素晴らしい内燃機関の燃焼技術を、ディーゼルに展開するべきで、将来が不安な電動車の為に、むざむざと捨て去る方針は理解しがたい。
いつもいっているが、電気自動車は車載電池に革命的な進歩が無い限りは、所詮都市部の近距離移動手段に止まると考える。だから、「飛行機が電気モーターで飛ぶ世の中になれば考え直す」といっている。
車の将来は、水素とFCV(燃料電池車)がキーになるだろう。
●ディーゼルイメージの棄損
このところディーゼルへの風当たりが強いのは事実だ。
諸悪の根源は2015年、フォルクスワーゲン(VW)のアメリカでの排ガス規制に対する不正問題だ。アメリカ本土のディーゼル車に対する排気ガス規制に対応できなかったVWが、プログラムに細工して、走行中にクリアできない部分の作動を抑制し、汚いままの排気ガスを放出していたのだ。
これは企業倫理の問題で、ディーゼルに対するイメージを棄損したVWの罪状は重く、その結果は全世界的な損失に繋がった。
●現在のディーゼル
ロータリーエンジン(RE)を実用化した世界で唯一のメーカーであるといっても過言でない、マツダのディーゼル車の評価が高い。最初は、「ロータリーからディーゼル?」と思ったが。
日本のディーゼルは、先ず「いすゞ」が高評価を得た。
1962年いすずは、ベレルに2000ccガソリンの他、ディーゼルエンジン搭載車も市場投入した。その後、「トヨタ」のディーゼルが高評価を獲得した。
そして、現在は「マツダ」のディーゼルがベンチマークになっている。
【画像 CX30クリーンディーゼルエンジンSKYACTIV D1.8】
CX30クリーンディーゼルエンジンSKYACTIV D1.8
昔は課題であったディーゼルの「騒音」と「振動」は大幅に改善された。VWの不正問題で、ディーゼルのイメージが極端に悪化したが、環境面では悪くない。
欧州の都市では、古いディーゼル車の市街地乗り入れ禁止や、感情論みたいな要因も無視できない。もっとディーゼルに対する理解が求められる。
非常に厳しいアメリカのディーゼル排気ガス規制に対しては、VWが不正問題を起こした時点で、この規制を完全にクリアできるのはマツダだけであった。
しかしマツダの技術陣は、「規制クリアが目標」ではなく、「規制クリアは当然、ディーゼル車としてのより良い商品完成」に関して、「技術者自身」納得が行かず、今少し時間をかけて熟成しようと、アメリカ市場投入を見合わせていたそうだ。
●劣等生の不正行為
答えは合格ラインクリアだが、自分に満足が行かないからと提出を躊躇していたM君と、合格点獲得は無理だからカンニングしたV君。
日本国内ではV君の方が「いい子」で、M君は「今イチ」のように見られているが、世界規模での評価は異なる。M君を客観的に判断してやって欲しいと思う。
ディーゼルは、将来的にも存続し続けるだろう。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)