類人猿が「心の理論」を持つことの一つの証明 京大などの研究

2019年10月2日 18:49

 ヒトは「心の理論」という他者の認識を、分析・理解する能力を持つ。これと同じ能力を類人猿も持っているかどうかというのは、心理学や認知科学における重大な問題なのだが、今回、それを肯定的に証明する一つの実験に、京都大学などのグループが成功した。

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 研究に参加しているのは、京都大学の狩野文浩特定准教授、平田聡教授、友永雅己教授、英セイント・アンドリュース大学クのリストファー・クルペンイェ研究員、ジョセップ・コール教授ら。

 サリーアン課題という有名な問題がある。かいつまんで説明するが、「サリーはボールを籠の中に入れて外に出た。その間にアンはボールを箱に移した。サリーは部屋に戻ってきた時どこを探すか?」というものである。普通に考えればすぐ分かるように正解は「籠」であるが、人間でもまだ心の理論を確立していない幼児などは「箱」と答える。

 さて、ではチンパンジーはこの問題を解けるであろうか。視線の分析に基づいたサリーアンの類似課題で実験が行われており、解けるらしい、とは言われているのだが、否定論者からの難しい批判がある。「チンパンジーは人間の行動に関する一定のルールを理解しているだけで、ヒトと同じ心の理論を持つわけではない」というものである。

 この否定困難な批判を回避して、チンパンジーの心の理論が存在することを証明するため、研究グループは新しい実験課題を設定した。見た目のまったく変わらない、しかし片方は目隠しでもう片方は透けて見えるゴーグルである。二つのうちのどちらかをチンパンジーに体験させ、しかるのちに同じ見た目の目隠しないしゴーグルを利用した被験者の行動を動画を見せて予測させる。

 すると、まったく同じ動画を見せているにも関わらず、チンパンジーは正しい行動予測をしたという。これは、チンパンジーが心の理論を持っており、かつそれは自己の経験に基づいて獲得された情報によるもので、他者の行動のルールに対する理解に基づくものではない、と結論付けられるのである。

 なお研究の詳細は、米国の国際学術誌「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」にオンライン掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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