出版不況、歯止めかからず 14年連続のマイナス 減少幅は縮小傾向

2019年10月1日 08:59

 出版不況に歯止めがかからない。かつては活字がメディアの中心で情報・教養を獲得するために書籍を購入することが一般的だった。インターネットが普及し始める96年をピークに紙書籍市場の規模は縮小へと転じ、回復の兆しも見せないまま現在に至っている。

 帝国データバンクが9月26日に2018年度の「出版関連業者の経営実態調査」の結果を公表している。帝国データバンクは自社データベースの約147万社から19年9月時点で出版社、出版取次及び書店経営を主業とする企業4734社を抽出し売上高など経営実態などを分析した。

 18年度の出版社の売上高は1兆6036億4700万円で前年度比0.2%減、2年連続の減少となっている。出版取次は1兆5195億3200万円、4.3%減、書店経営は1兆652億6000万円、1.3%減で、全ての業種でマイナスだ。10年前の2008年度と比較すると出版社で15.0%の縮小、出版取次では25.1%、書店経営が12.0%の縮小となっており、特に出版取次での減少が著しい。減少幅は年々縮小傾向にあるようだ。

 売上規模別の構成比を見ると、3業種全体では「1億円未満」が 51.6%でもっとも多く、次いで「1億~10億円未満」38.0%となっている。業種別には出版社で「1億円未満」52.1%が最も多く、出版取次では「1億~10億円未満」48.4%が、書店経営は「1億円未満」57.4%が最多となっており、3業種ともに小規模事業者が依然として多くなっている。

 全国出版協会の発表によれば18年の紙出版物の販売額は前年比5.7%減の1兆2921億円と推計されており、14年連続のマイナスとなっている。中でも雑誌は5930億円、前年比9.4%減で21年連続のマイナスという厳しい状況だ。

 紙媒体が縮小傾向にあるなか各業界の業績も厳しいものとなっている。メディアが多様化するなかで紙媒体の回復はありえないといえる。この状況に対して出版社ではデジタル分野の販促を強化し雑誌の縮小分を補おうとしている企業も見られ、また出版取次では道徳の教科書化などを背景に学習商材の販売数を増加させている企業も存在する。書店経営では店舗のスクラップアンドビルドを進める一方で書籍・雑誌以外の雑貨や文房具など多角化を推進する企業なども見られる。

 紙からデジタル化への対応のみでなく新しいビジネスモデルを模索する動きが活発化しており、レポートは「大手・中小規模の業者、特に出版取次、書店経営業者の次なる一手に期待がかかる」とまとめている。(編集担当:久保田雄城)

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