高濃度のヒ素の湖で暮らす線虫を発見 米モノ湖で 明大などの研究

2019年10月1日 12:04

 ヒ素はヒトを含めほとんどの生物にとって猛毒である。米国・カリフォルニア州のモノ湖は、高い塩分濃度を持つ塩湖であると同時に、高濃度のヒ素も含まれる極限環境の天然湖だ。従来ここに棲む生物はアルカリミギワバエというハエと、ブラインシュリンプというエビしか知られていなかったが、今回、明治大学の参加する国際共同研究グループが、猛毒のヒ素に対しヒトの500倍もの耐性を持つ線虫の存在を確認した。

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 研究に参加しているのは、明治大学農学部の新屋良治専任講師(JSTさきがけ兼任)、米国California Institute of TechnologyのPaul W. Sternberg教授のグループ、イスラエルUniversity of HaifaのAmir Sapir講師、森林総合研究所の神崎菜摘研究員ら。

 線虫というのは線形動物門に属する多細胞動物である。一部は寄生虫として知られている。ほとんどの線虫は1ミリ程度で、肉眼では見えないほどに小さく、また、一般にはあまり知られていないが昆虫と並んで地球上でもっとも個体数・種数の多い動物群の一つであると言われる。

 極限環境生物という言葉がある。乾燥した砂漠、深海、永久凍土などのヒトをも寄せ付けない環境で暮らしている生物の総称である。そのほとんどは細菌など微生物だが、クマムシや線虫などの多細胞生物も稀に含まれる。昆虫は頑丈な外骨格を持つが、そういったもののない線虫がどのように極限環境に適応するのかはこれまで謎に包まれていた。

 今回、研究グループはモノ湖の3つの地点において土壌のサンプリングを行い、顕微鏡で線虫を探索した。結果、8種が発見され、うち5種は過去に発見された例のない未記載種であった。

 さらに、そのうちの一種Auanema sp.を実験的に培養し、ヒ素耐性を調べたところ、ヒトの約500倍ものヒ素耐性を持っていることが明らかになったという。

 研究の詳細は、Current Biologyに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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