外来種の脅威により在来種の逃避行動が進化 東京農工大など

2019年9月20日 17:02

 日本に導入された外国起源の生物は約2,000種に及ぶ。東京農工大学は17日、奄美大島に持ち込まれた外来種のマングースが、絶滅危惧に瀕しているカエルの逃避行動を進化させたことを突き止めたと発表した。

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■侵略的外来種による在来種への影響

 外来種のうち、地域の自然環境に大きな影響を与え、生物の多様性を脅かす可能性があるものが、侵略的外来種である。マングースのほかにも、小笠原諸島に持ち込まれたトカゲ「グリーンアノール」などが侵略的な外来種として挙げられる。

 島に住む在来種を食べるような生物は存在しないため、逃げるという行動をもちあわせていない。そのため、新たに侵入してきた外来種が在来種を食べる現象が起きる。だが在来種が逃げるという行動を取るならば、生き残る確率は上昇すると考えられる。

逃げる等の行動は、個体の学習ではなく、集団の進化として発達するという。ところが、外来種が在来種に及ぼす行動の発達については、ほとんど明らかにされてこなかった。

■外来種が駆除されても残る逃避行動

 東京農工大学、国立環境研究所、森林総合研究所の研究者から構成されるグループは、2013年8月から10月にかけて、人間がどこまで接近すれば在来種のカエルが逃げ出すかという「逃避開始距離」を計測した。その結果、マングースの影響が強い地域に住むカエルは、すばやく逃げる傾向にあることが判明した。

1979年に奄美大島にはじめて外来種のマングースが持ち込まれた。2000年に開始された駆除活動により2013年の時点でほぼ駆除されたにも関わらず、今回在来種のカエルが逃避行動を保持し続けていることが判明した。カエルの寿命は3年から4年であるため、十数世代でカエルが逃避行動を進化させたと研究グループは推測する。

 外来種が在来種に与える影響として、行動以外にも形態や運動機能、生理機能などが想定される。行動等の性質の変化から、外来種が在来種に与える影響を適切に理解できるだろうと、研究グループは期待を寄せている。

 研究の詳細は、英Journal of Zoology誌にて9日付で掲載された。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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