「就職したくない」学生と「すぐ辞めてしまう」若手社員に思うこと
2019年9月19日 17:16
ある大学の3年生ですが、学校でもそろそろ就職に向けた活動が始まろうとしているものの、就職に対して気が進まないそうで、就職せずに派遣の仕事やアルバイトで、当面生活しようかと考えているそうです。
今もアルバイトはしていて、結構な時間数を働き、職場でも頼りにされていて評判も良いらしいので、決して勤労意欲がない、働きたくないということではありません。
理由を聞くと「何となく」と言い、「就職しなくても当分はどうにかなる」などと言います。先に就職した友人たちには、すでに会社を辞めてしまった人が何人もいて、中には正社員で再就職をしていない人もいるため、どうにかなると思うのかもしれません。
私からは、一応将来的な昇給とか、賞与の有無とか、有給休暇や所定休日を考えると結構休めるとか、多少気が進まなくてもとりあえず一度就職して働いてみると、また感じ方も変わるという話をしました。
それは実際に私自身が、その当時は同じように「就職したくない」と思っていて、その後いろいろな話を聞いて考え直して、就職して働いてみたら思っていたほど嫌ではなかったという経験があるからです。
話したことが本人に響いたかどうかはわかりませんが、とにかく「社会人になること」が、それくらい魅力を感じないことになってしまっているのは大きな問題です。
新入社員の早期退職は、ずいぶん前から問題になっていますが、最近では「学んできたことを活かせる仕事でない」「希望していた仕事でなく異動も当分受け入れられない」といった退職理由を耳にします。
上の世代は終身雇用の中で、自分のキャリアを会社任せにしてきたため、「会社から与えられた仕事に従う」ということに疑問を持ちませんが、若い世代は違います。
にもかかわらず、上の世代は自分たちの時代を同じ発想で、本人の専門性とつながりが薄い仕事を一方的に与えたり、「異動希望が通るのは、早くても5年後」のような時間感覚でいたりしますから、若手が「辞めたい」「辞めるしかない」と思ってしまう気持ちはわかります。
このやり方でも会社に残る人は、「仕事内容を問わずこの会社で働きたい」という人に限られますから、それくらい何かを持っている会社でなければ、通用しないやり方でしょう。
また、「仕事が合わない」などと言いますが、その中には会社が顧客志向でないことに憤っていたり、前向きな提案をことごとく無視されていたり、要はもっとレベルの高い仕事がしたくてもそれができない環境だったということがあります。
正しいことのはずなのに取り合ってもらえない、ただ黙って「長い物には巻かれろ」のような会社の姿勢が、優秀な若手を追い出す結果になっています。
ちょうど今は過渡期にあたるのかもしれませんが、終身雇用の風習を中途半端に引きずっている会社が、まだたくさんあります。そういう会社は、社員個人の市場価値、仕事上の希望、その他キャリアについて鈍感で、会社の都合に社員が合わせることは当然かのように振る舞いますが、先のことを保証しづらい昨今の環境では、「将来のために今は我慢する」ということが成り立ちづらくなっています。1年くらいはそんな期間があったとしても、3年、5年ではもう無理です。
「就職したくない」という学生や「すぐ辞めてしまう」ような若手社員を、ただの甘えととらえる向きがありますが、そういう側面がある一方、働く場を魅力的にしていない先輩社会人たちの責任もあります。何よりも、「楽しそうに仕事をしている大人」がまだまだ少ないと思います。
若者たちに働く楽しさや魅力を見せるのは、先輩社会人の役割です。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。