保育園・託児所市場、公的資金投入で拡大傾向 人材確保困難で慎重な動きも
2019年9月19日 11:59
女性の就労機会が増大しているとともに実績においても女性の就労人口は増加傾向だ。近年では人手不足の深刻化によって女性の労働力は以前にも増して貴重な戦力と見なされるようになり、働き方改革などで出産・子育てによる離職抑止の動きは加速している。そこで長年の課題である保育施設の不足解消も以前にも増して強い関心が持たれるようになっている。
矢野経済研究所が今年4月から7月にかけて国内の子供に関連する様々な市場について調査を実施、このうちの保育園・託児所市場に関する集計・分析結果を9月2日に公表している。
レポートによれば、2018年度の保育園・託児所市場規模は前年度比6.0%増の3兆3500億円と推計され、国・自治体による、開設コスト等に対する整備関連の補助金や保育士の処遇改善等の運営関連の補助金など、待機児童対策関連の公的資金投入を背景に好調に推移しているようだ。
今後、利用児童の増加も見込めることから、企業主導型保育事業や事業所内保育事業、小規模保育事業、ベビーシッター事業など、子どもの預かり需要の多様化に対応したサービスの提供に取り組む企業も増加している。
また、事業者自らが保育施設を設けるのではなく、自社が保有する保育施設の運営ノウハウやサービスコンテンツをコンサルティングサービスとして販売する動きも活発化しているようだ。女性従業者が多い企業では人材確保の観点から欠かせない福利厚生施設として自前の保育施設を設けるところも増加しており、こうした企業をターゲットにコンサルティング事業に乗り出す企業も増加し、補助金に依存しないビジネスモデルも出てきているようだ。
このように市場は拡大傾向で推移している一方で、保育士不足を背景に人材確保コストが膨張するなど開園のための投資コストが増加しているため新規開園に慎重な事業者も増えてきており、施設数拡大路線ではなく稼働率など費用対効果を重視した安定運営にシフトする動きも見られる。
長期推移を見ると、少子化による児童数の減少や保育士不足などを背景に16年以降は新設ペースが減速している。現在のところ拡大路線が主流だが、こうした動向からレポートでは、今後は「徐々に新規開設数を減らす大手保育事業者が増加し、市場成長率は鈍化する」と見込んでいる。(編集担当:久保田雄城)