紅葉を起こすための遺伝子はバクテリアから獲得された 北大の研究
2019年9月8日 20:36
植物が緑色なのはクロロフィル(葉緑素)を持つからである。また、紅葉が起こるのは、植物が代謝によって葉のクロロフィルを分解するためだ。今回の研究は、植物が自身の葉のクロロフィルを分解するのに用いている酵素は、自身の進化によって獲得したものではなく、バクテリアのDNAを取り込むことで獲得されたものである、というものである。
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研究を行ったのは、北海道大学低温科学研究所の伊藤寿助教、北海道大学大学院生命科学院博士後期課程の小畑大地氏らの研究チーム。
紅葉というのは大きく概観すれば植物の老化現象の一種であるというのが、現在のところの通説である。紅葉のほとんどは、日照時間が夏から冬にかけて短くなる間の期間、すなわち秋に起こるものである。光合成があまり重要でなくなる時期に備えて、葉から栄養を回収し、無駄な水分やエネルギーを消費することを避けるために紅葉は起こるらしい。
さて、クロロフィルの中心となっているのは金属のマグネシウムである。クロロフィルを分解するに際しては、マグネシウム脱離酵素によってマグネシウムを外すことになる。これが植物の老化や紅葉における中心的な機構だ。
今回の研究では、これに用いられる植物のマグネシウム脱離酵素と似たタンパク質が、クロロフィルを持たないバクテリアから見つかった。このバクテリアの遺伝子こそが植物のマグネシウム脱離酵素の起源なのではないかという仮説が立てられ、検証が行われることになった。
結果として、これらの相同タンパク質について分子系統の解析を行ったところ、植物の祖先がバクテリアから「水平伝播」によってマグネシウム脱離酵素を獲得したことが判明したという。水平伝播というのは、他の生き物の遺伝子を直接取り込むことをいう。
研究の詳細は、進化生物学の専門誌Molecular Biology and Evolutionに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)