社員の副業はイノベーションを起こすのか 過度の期待には問題点も
2019年9月8日 18:22
社員の副業容認について消極的な企業もあれば、積極的な企業も存在する。後者の企業が期待していることの一つが、社員の副業によってイノベーションが促進されることだ。
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目まぐるしく社会情勢が動く現代では、環境変化への対応とイノベーションは不可欠だ。副業容認によってイノベーションが起こるメカニズムや、過度な期待による問題点についても触れていきたい。
■副業によってイノベーションが起きるメカニズム
政府による副業解禁は、働き方改革の一環として推進された。同時に、副業解禁にはイノベーションの創出が期待されていたのである。
社員は副業を行うことで、社外での経験や自己研鑽を積む。新鮮な空気に触れた社員は副業で得たものを企業持ち込み、結果イノベーションが起きるというメカニズムだ。これまでの単一企業に縛られた働き方ではなく、副業によってより柔軟性を持たせる。環境を整え、社会全体の流動性を高めようとするのが政府の期待である。
IT大手のソフトバンクでは、2017年4月より働き改革に取り組んでいる。業務の効率化によって時間を生み出し、本業に支障が出ない範囲での副業を認めた。特にIT企業では、ベンチャー精神が強く求められる。創造性とイノベーションの土壌となる企業風土を作ることは、重要な課題であった。
■副業容認はイノベーションの特効薬ではない
ビジネス用語の中でも頻出の単語、「イノベーション」。このイノベーションには、漸進的、画期的、破壊的と大きく3種類ある。その重要性には疑いの余地はないが、創出のための体系化された理論は乏しい。
社員の副業を認めれば、勝手に成長してイノベーションが起きるのだろうか。イノベーションは、自然発生的に起こるものである。公式などはなく、意図した方向に促せるとは限らない。
企業にできることは、イノベーションが創出されやすい環境を作ることである。つまり、土壌を作るということだ。畑を耕し肥料を入れ、作物が育ちやすい環境を整える。
いくら副業を容認したとしても、それだけでは期待した効果が得られるとは限らない。企業内に、イノベーションを促進させるような環境や企業風土が整っていることが不可欠な条件だ。
副業解禁は、イノベーションの特効薬ではない。しかし、創出するための環境作りに貢献し、労働者の流動性の高まりと交流の増加は期待できるだろう。そこに、企業側の環境作りも加われば、さらにその効果は増すはずだ。(記事:西島武・記事一覧を見る)