楽天が急停止、携帯への本格参入を一時延期 (2-2) 通信料金はどうなる?

2019年9月7日 20:15

 新規で携帯電話事業に参入する楽天には、乗り越えなくてはならない設備問題が大きく2つある。

【前回は】楽天が急停止、携帯事業への本格参入を一時延期 (2-1) 何がネックだ?

 一つは基幹通信網と末端基地局網をつなぐネットワークだ。これはあっと驚く仮想技術を駆使すると伝えられている。聞いているだけでは狐につままれたようないい話で、5Gへの転換も瞬時に可能と伝えられている。他の通信事業者が膨大な投資に潰されそうになりながら、必死の投資を続けている中では際立つ余裕だ。

 もう一つの問題が基地局の設置だ。基幹通信網と各基地局をつなぐネットワークは仮想化できても、一つ一つの基地局はリアルな施設を作り上げなければならない。自前で整備する東京・大阪・名古屋地区の基地局は、設置場所のバランスを考えながら、設置可能物件を絞り込んで権限者の了解を取り付け、設置工事と回線の接続を行わなければ基地局として機能しない。

 それでなくとも大都市圏では「新たに基地局を設置する物理的な余裕がない」という声すらあった中で始める事業だから、容易なことではなかった。東京オリンピック関連工事が佳境を迎え、作業員の取り合いが伝えられる状況では、タイミングの悪さも重なった。

 おまけに、IT技術を駆使することが本業である楽天にとって、リアルな個別の交渉から作業員の確保が必要な基地局設置の泥臭い工程に、馴染みがなかったのは事実だろう。

 6日に行われた会見で三木谷浩史会長兼社長は強気だった。本格的なサービス開始までの日程に具体的に触れることはなく、支障がなければ1~3カ月後にも本格稼働する弾力性を強調した。

 10月1日から1週間で利用者を募集し、当選した5000人に対して11日から案内を開始する。すでに社内での実証実験を積み重ねているようだが、さらに拡大した実証実験を行うようなものだ。この限定サービスは20年3月まで利用料金を無料にして行われる。

 基地局網が予定通りに構築されていれば、具体的な料金プランが発表されていた筈の会見だったが、肩透かしを食らった格好だ。10月からは消費税の増税にあわせてポイント還元が開始され、通信料金競争が本格化すると期待されていた節目だ。

 ソフトバンクは既に「2年縛り」を廃止すると発表している。KDDIは「2年縛り」の違約金を上限の1000円に設定した。

 三木谷会長兼社長が自信を持って語る「他社には絶対に追従できないプラン」がどんなものか、期待を持って待ちかねた人は多いだろう。自らハードルを上げているように感じる楽天が、練り上げた料金プランで本格サービスを始める時まで、世間の注目を集めていられるのだろうか?(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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