新素材「ムーン・パーカ」発売へ 4年越し悲願達成  ゴールドウイン×スパイバー

2019年9月1日 08:08

 スポーツアパレル大手のゴールドウインと慶応義塾大学発のベンチャー企業スパイバー(山形県鶴岡市)は、共同開発した人工タンパク質繊維「ブリュード・プロテイン」を用いた第2弾商品となるアウトドアジャケット「ムーン・パーカ」を、12月に50着限定発売する。

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 プロトタイプ発表から4年、人工合成クモ糸で最大の課題だった、濡れると大幅に収縮する「超収縮」を解消した。超伸縮を9割抑えるブリュード・プロテインは、微生物の発酵工程で作られた構造タンパク質素材。ムーン・パーカに先駆けて発売されたTシャツは、スパイダーによると「カシミヤをベンチマーク」にして素材を開発、柔らかくしっとりした着心地を持つ。

 一方、ムーン・パーカの表地に採用したブリュード・プロテインは、ナイロンを指標にした高い耐久性、ゴールドウインの主力アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」の製品とほぼ同じ耐水圧や透湿性を備える。

 8月29日、都内の記者発表会でムーン・パーカが披露された。ブリュード・プロテインはアミノ酸配列や紡糸工程により、ソフトなカシミヤ調から強じんなナイロンまで物性を変化させられることが示された。ゴールドウインの渡辺貴生副社長執行役員は「今後はファスナーやボタンなども作り、進化させていきたい」とコメント。

「次の製品は未定だが、フリースを手がけてみたい。海洋プラスチック汚染が世界的な課題となる中で、ブリュード・プロテインで持続可能な社会の実現に貢献していく」と意欲をみせた。

 スパイバーの関山和秀代表は「タンパク質の改良に終わりはなく、用途に応じて多様に応用できる。地球規模の環境負荷低減に大きな前進となる、アパレル、自動車の両分野を中心に研究開発を進めたい」との方向性を示した。ナイロンやポリエステルなど石油由来素材に代わる素材として拡大を目指す。

 ムーン・パーカは15万円。今年がアポロ11号の月面着陸50周年であることにちなみ、裏地にアポロ11号が撮影した地球を配した。特設サイトを通し予約販売する。第1弾のTシャツ(2万5千円、限定250着)は予約がいっぱいとなり、同日から抽選で発送を開始した。

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