酸性下でも蛍光する緑色蛍光タンパク質「rsGamillus」が切り開く新領域とは?
2019年8月26日 18:27
大阪大学産業科学研究所の永井健治教授らの研究グループは8月20日、酸性環境下でも蛍光する緑色蛍光タンパク質「Gamillus」の改良版「rsGamillus」の開発に成功したと発表した。研究チームは、分子設計等の技術を使い「Gamillus」を改良、光スイッチのコントラストを高めた。
【こちらも】東大など、世界最高速の共焦点蛍光顕微鏡を開発
今回は、この酸性環境下でも蛍光する「rsGamillus」の意義について解説する。
■緑色蛍光タンパク質とは?
緑色蛍光タンパク質は1962年に下村脩(しもむらおさむ)によってオワンクラゲから発見された。後に下村はこの業績によってノーベル化学賞を受賞している。
そしてその後、緑色蛍光タンパク質は医学・生物学等のさまざまな研究分野で幅広く応用された。
例えば、特定の遺伝子に緑色蛍光タンパク質をつくるDNAを組み込む。すると、その特定の遺伝子からタンパク質がつくられるときに同時に緑色蛍光タンパク質もつくられる。
そのため、紫外線等を当てるだけで蛍光し、いつ、どれくらい、そのタンパク質がつくられ、どのように細胞内を移動し、分布するのかまさに一目瞭然でわかる。いわばタンパク質に緑色に蛍光するタグを付けることができるのだ。
また、特定の遺伝子を組み込むときに、その遺伝子に蛍光タンパク質をつくるDNAを組み込んでおけば、組み込んだ遺伝子が正常に機能しているかどうかも一目瞭然でわかる。
■緑色蛍光タンパク質の弱点
こうして医学・生物学等の研究分野において欠かせないツールとなった緑色蛍光タンパク質にも弱点がある。一定の酸性環境下では蛍光しないのだ。これは、その後に開発された改良型の緑色蛍光タンパク質にも共通する。
しかし、「rsGamillus」はpH4.5でも蛍光し、ほぼ細胞内のどこでも使える。
例えば、リソソームだ。リソソームは、細胞小器官の一種で、いわば細胞内の掃除屋である。不要になった細胞内の物質を分解・リサイクルしている。
このリソソームはオートファジーやアポトーシス等のさまざまな重要な生命現象と深く関わっている。しかし、リソソームの内部は、pHが低く、これまで緑色蛍光タンパク質による観察は難しかった。
しかし「rsGamillus」を使えば、リソソームの内部でも緑色蛍光タンパク質を使った観察ができる。
このような「rsGamillus」は酸性環境下における未知の生命現象の解明や医学・創薬分野への応用が期待されている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)