阪大と産総研、世界最薄・最軽量でノイズ軽減の生体計測回路を開発

2019年8月16日 20:10

 大阪大学産業科学研究所の関谷毅教授らのグループと産業技術総合研究所は16日、世界最薄かつ最軽量の生体計測用回路の開発に成功したと発表した。

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 生体計測回路は医療やヘルスケアに使用されるが、これまでのものはシリコンなどの硬い素子で作られていたため、肌に触れると炎症を起こしやすく、長時間の信号計測が困難であった。

 研究グループは、厚さ1マイクロメートルのプラスチック薄膜上に有機トランジスタという柔軟な素子を集積することで、装着感を軽減。回路は差動増幅回路という仕組みを採用しており、微弱な生体電位を測定可能にするだけでなく、ノイズを取り除く機能も備わった。ヒトの生体実験で、実際に心電信号のリアルタイム測定を行い、これらの機能を実証した。

■生体の計測に有用な有機トランジスタ

 肌などとの親和性が高く、炎症も起こしにくい電子回路の需要は、少子高齢化の加速とともに医療・ヘルスケア領域で関心が高まっている。特に有機トランジスタを用いた柔軟な増幅回路は装着性にも優れており、微弱な生体信号を捉えるセンサーとして研究されてきた。ところがこれまでの増幅回路は、測定したい生体信号とノイズの区別がつかず、ノイズを小さくして測定することが困難であった。

■電流ばらつきを除去したフレキシブル増幅回路

 研究グループは、有機トランジスタに生じる電流のばらつきを2%以下に抑える技術を開発。これにより、ノイズ除去機能を備えた差動増幅回路で、かつフレキシブルなものが実現した。

 厚さ1マイクロメートルのプラスチック薄膜上に回路が製造され、折りたたんだり丸めたりしても回路が破壊されることはなく、装着時の違和感もない。この回路により、心電を25倍に増幅しつつノイズを7分の1以下に抑えることができるという。ヒトの生体実験では、外部電源や歩行動作によるノイズが除去されていることを実証した。

■医療費削減・高齢化社会の課題解決へ

 生体信号を受信するデバイス自体は、スマートウォッチなどの形で実現している。しかし、今回の研究成果である精度・装着性に優れた生体計測回路により、日常のあらゆる場所で違和感のない生体計測が可能となる。リアルタイムでの計測結果は、高齢者や患者の見守り、病気の初期段階での発見に大きく貢献すると期待される。

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