楽天の「通信キャリアへのランクアップ」は成就するか? (3-3) 成功の鍵は?

2019年8月16日 19:06

 8月初旬の段階で、楽天モバイルの公式サイトに掲載されている自社回線対応端末はシャープが6機種、OPPOが4機種、HUAWEIが2機種で合計、Androidスマホ12機種と、モバイルWi-Fiルータの合計13機種になる。メーカーも品揃えも貧弱な印象は拭えないが、通信が軌道に乗ったと評価されれば、より多くのメーカーの参入によりいずれ充実することになるだろう。

【前回は】楽天の「通信キャリアへのランクアップ」は成就するか? (3-2) 「仮想化クラウドネットワーク」は機能するか?

 例年、9月中旬にアップルが新型iPhoneを発表して、翌週金曜日に発売というパターンが続いている。楽天の携帯参入時期と重なり、特に日本ではiPhoneのシェアが高いため、楽天はどうなるのかと関心を持つ人も多い。

 公式のアナウンスがない(質問には”ノーコメント”)ため想像する外ないが、アップルは端末の年間販売台数が1000万台以上でなければ、取り扱いをさせないと業界で看做(みな)されていること、楽天が想定獲得ユーザー数を1500万人に設定していることを勘案すると、楽天では新型iPhoneを扱うことは難しいと考えるのが自然だ。

 18年12月にスタートしたPayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」では、刺激的なキャッチフレーズに注目が集まった反面、一気に取引が集中してシステム障害を引き起こしたことや、不正利用が話題になるなど、プラス効果ばかりでない面が垣間見られた。

 キャッシュレスサービスの主導権を獲得しようとしてセブン・イレブンが7月1日に始めたセブン・ペイは、あまりにも甘いセキュリティのスキを突かれた。僅か3日でほとんどの機能が中止に追い込まれ、結果的には9月末日でのサービス終了に至った。セブン・イレブンは、ブランドに大きな傷を負うことになった。

 直前に発生した2つの事例は、楽天に大いなる教訓を与えたに違いない。8日に行われた決算会見で三木谷浩史会長兼社長は”サービスは段階的に広げる。当初2カ月間は利用者や機能を限定して開始する”ことを表明した。

 楽天では社内の実証実験で問題がないことを確認しているが、世界初の「完全に仮想化したクラウドネットワーク」に、社内の実証実験を遥かに凌駕する負荷がかかった場合にも、安定した結果を出すことができるかどうかは、未知の領域だ。更に基地局の設置が遅れている状況であれば、より慎重に「念には念を」という心理に傾くのは当然でろう。

 順調に進めば、サービス開始から2カ月後を目途にネットでの申し込みを全面的に解禁し、20年1月から実店舗での取り扱いを始める予定だ。

 公式サイトでは、19年3月14日10時以降に楽天モバイルに新規を申し込んだユーザーに対して、自社回線に対応する新専用SIMカードが送付されると告知している。そのSIMカードには既存契約のプランなどが引き継がれる。

 また、19年3月14日10時以前に申し込んだユーザーには、自社回線への移行詳細を別途通知するようだ。上記の段階的な利用解禁との関連性は不明であるが、基地局の設置が計画通りに進んでいないことを勘案すると、システムへの負荷を徐々に上げて無難に滑り出したいという思いは共通しているだろう。

 楽天に残された時間はあと僅かだ。慎重に準備して、”楽天”的に行動することがプロジェクトの要諦であるとすれば、既に結果は見えている筈だ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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