楽天の「通信キャリアへのランクアップ」は成就するか? (3-1) 通信料金が格安スマホと同等になる?
2019年8月16日 11:19
17年12月14日、楽天が「4G(現行の第4世代携帯電話システム)でドコモ、KDDI、ソフトバンクに続く第4の通信事業者を目指す」ことを発表してから、1年8カ月が経過した。発表当初は、携帯電話事業の宿命である膨大な設備投資に、楽天が耐えられるのかという資金調達問題や、分け前にするパイの残りが少ない成熟産業になった携帯電話事業で、楽天の勝算が見えない、という意見が渦巻いた。
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常識の中に革新はないというのがフロンティアの宿命だ。新参者が何かを始めようとすると、寄ってたかって足を引っ張ることは、古今東西繰り広げられてきた人類の歴史そのものとも言える。
楽天の通信キャリア進出に関して通信関連事業者の最大の関心は、「完全に仮想化されたクラウドネットワーク」が、期待された通信速度を維持しながら支障なく円滑に利用ができるかどうかだ。もし、通信の速度と品質に問題がなければ、遠巻きにして事態の推移を見つめている関連事業者が、一転して楽天詣(もう)でに走ることだってあり得る。関連事業者にとって、楽天のチャレンジが成功することの意味合いは、それほど大きい。
これに対して、ユーザーの最大の関心は「通信の速度と品質に問題がない」ことを前提に、通信料金がいくらに設定されるのかということだろう。
楽天の三木谷会長兼社長が携帯事業の料金プランについて、「格安スマホと同水準にしたい」と述べていたことや、楽天が電波監理審議会で1.7GHz帯の免許を獲得した際、通信キャリアへ進出した時点でのサービスを「現在楽天モバイルで提供中の料金プランで提供予定」としていることがヒントになるだろうか?
その表現のままに適用されると、プランによっては月額1980円(税抜、楽天会員の1年目料金)の可能性も出て来る。
通信料金の設定は、激しいシェア争いをしている通信キャリアの基本戦略と言える。各社が後出しジャンケンの旨みを狙って、腹の探り合いと競争相手の出方待ちをしている。
楽天が打ち出すプランの内容次第では、大手3社を巻き込んだ本格的な価格競争に発展する可能性がある。それは、総務省の期待する局面でもある。三木谷会長兼社長は、料金プランに関して”競合相手に手の内を見せる時期でない”として、具体的な説明を避けている。それはまだ「お楽しみ」の領域である。 (記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)