体内時計のリズムをコントロールする遺伝子配列を解明 制御に期待 東大の研究
2019年8月13日 17:16
哺乳類をはじめとする地球上の生物は、ほぼ24時間周期の体内時計を持っている。8日、この周期を生み出す遺伝子の配列を決定したという報告が東京大学の研究グループにより発表された。この遺伝子の働きを制御することで、体内時計がリセットできる可能性があり、今後は、体内時計の乱れで起こる時差ボケや不眠などの解消に役立てていくことが期待できる。
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研究グループは、東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻の深田吉孝教授、吉種光助教、浅野吉政大学院生らからなる。
人間を含む生物において、睡眠をはじめとした様々な体の機能は、およそ24時間周期のリズムで変動する体内時計を持っている。そしてそのリズムをコントロールする「時計遺伝子」であるE-box・D-box・RERが、お互いをリレーのように制御しあうことで、順番に働き、1日のリズムを生み出している。これまでは、その遺伝子がどこにあり、どのような配列を持っているのかはわかっていなかった。
今回は、時計遺伝子のひとつであるD-box遺伝子の働きを促進するDBPタンパク質と、抑制するE4BP4タンパク質を用いて研究が行われた。これらのタンパク質が結合した部位を、次世代遺伝子配列解析と統計学的な方法を組み合わせた「MOCCS2」という手法を用いて解析。その結果、D-boxの遺伝子配列とその配置を明らかにした。
さらにD-boxの働きを調べるために、E4BP4タンパク質が欠損しているマウスの細胞を用いて検討した。これまでの研究により、培養細胞のpHを少し下げて中性から弱酸性にすると(pH7.0から6.6にすると)、その細胞の体内時計がリセットされることがわかっている。
まずマウスの細胞を弱酸性にすると、その概日周期はリズムを失いリセットされる。一方E4BP4タンパク質を持たないマウスの細胞を弱酸性にしてもリセットされず、そのままリズムを刻み続ける。このことよりE4BP4タンパク質、そしてこのタンパク質が制御するD-box遺伝子は、弱酸性下での体内時計のリセットに不可欠と考えることができる。
今回の研究により、時計遺伝子の遺伝子配列や体内時計リセットのしくみについて新たに明らかになったことは、現代社会で生きる我々にとって大きな意味を持つと考えることができそうだ。
例えば海外への出張や旅行、夜勤などで時差ボケや睡眠障害が起こったときの、治療や薬の開発などに役立っていくことが期待できる。日常的に昼夜かかわらず光を浴び、睡眠リズムが崩れやすい現代において、リズムを制御する物質が明らかになっていくのはとても重要なことであろう。(記事:室園美映子・記事一覧を見る)